【99.大人の男性】
相手は「ケイスケ」と名乗った。
本名ではなさそうだ。
私も偽名を使うべきだった、と後悔した。
ともかく約束の土曜日、指定された街のカフェに向かった。
この繁華街には、しおりたちに何度か連れてきてもらったことがあった。
約束の時間に約束の場所、、、
どの人だろう?
そこにケイスケさんから連絡が入る。
「キョウコちゃん、着いたら連絡ください。どんな服装でしょうか?」
もう来ているらしい、、
どの人かの詮索をするより、返信したほうが早いと思い、
「今着きました。ベージュのコート姿です」
数秒で、店の前で佇む私に近づいてくる男性がいた。
「キョウコちゃんですか?」
「は、はい、、、」
「ケイスケです。今日はありがとう。お店、入りましょうか」
ケイスケさんは、ともすれば20代にも見えるような、若々しい方だった。それに優しそうな雰囲気だ。
もっとも、私に男性の年齢を判断できるような目が備わっていた訳ではないが。
コートを脱ぎ、店内は十分に暖房が効いていたので、下のパーカーも脱いだ。
「随分厚着なんだね、、寒がりさんなの?」
「あ、、関西出身の私にはここは寒いですね」
少しの雑談のあと、本題を切り出される。
いつまでこの雑談が続くのかな、と思った矢先の絶妙なタイミングだった。
「その、、レイ、、のことだけど、、本当なの?」
さすがに公然と口に出来るワードではないと言う判断をしてくれたようだ。
それに敢えて、店内の隅の席をチョイスしてくれたのだろう、、、
色々と、「大人の気遣い」を感じさせてくれ、初めての私も安心した。
元彼も、、私よりだいぶ大人な印象を抱いていたが、ケイスケさんはその比ではなかった。
それだけに、「レイプされたか?」と言う問いに、「はい」と答えるのはとても恥ずかしかった。
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