【70.ロック・オン】
この日は、夏休みも終盤に差し掛かり、公佳の学校が「登校日」だった。
公佳は、学校の日はまず間違いなく真っ直ぐ帰宅することはない。
繁華街をうろつき、かなり遅い時間になってから地元に帰ってきて、そこからまだ帰宅せず、知人を呼び出して帰りは深夜になる。
潔たちが仲間に取り入れた田中たちが駅で公佳を待ち伏せする。
読み通り、公佳が地元駅に帰ってきたのは22時前だった。
「東雲じゃん、、久しぶりだな」
田中たち3人が偶然を装って公佳に近づく。
「あれ、みんな元気してた?久しぶりだね」
少しの立ち話から、歩は自然と例の公園へ向かっていた。
しかし、、潔の「人選」は的を得ていた。
公佳は基本「男好き」ではあるが、それでいてそれなりに相手も選ぶ。
自分に利がない、それどころか一緒に居て巻き添えを食いそうな人間とは適当に距離を置く。
その点、田中を含めこの3人は中途半端な「不良」だが、素行は最低限を保っている。
私から見れば最低限を保てているようには見えないが、、公佳からすれば及第点なのだろう。
とにかく3人は公佳をロック・オンした。
続いて、私が犯された日の話題を公佳に振る。
「なぁ東雲、、例の動画、続きとかないのかよ?」
「、、例の動画って?」
公佳は綺麗に田中の言葉を交わす。
「須藤先輩の動画さ、、あれ、東雲が撮らせたんだろ、、、間違いなく」
「ああ、、あれね。続きなんてないよ」
公佳の歯切れが悪い。
「誰に撮らせたんだよ?お前の取り巻きなら、、坂井や大村あたりか?」
「、、違うよ」
亮太や潔の名が挙がり、少し動揺を見せる。少しだけだ。このあたりが公佳は図太い。
「でも須藤さん、、レイプまでされたんだろ?なら男がいたのは間違いないだろ?」
更に食い下がる田中に、公佳は苛立ち始め、
「それ、、聞いてどうすんのよ、、須藤先輩をオカズにでもするわけ?」
「いやさ、、なんか坂井と大村、警察に連れてかれたって噂じゃん、、、あいつらが須藤さんを犯ったんなら話が合うじゃん」
「、、知らないわよ」
「え、、じゃあ東雲の動画と坂井たちは関係ないんだ、、?」
「ん?俺がどうしたって?」
抜群のタイミングで、亮太と潔が公佳たちの前に現れた。
遠目から見ている私にも、公佳の動揺が窺い知れた。
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