真壁と私がブースに入ってから10分ほどで文香はフロアに現れた。
私と目を合わせる。
決意と覚悟に満ちた目に見えた。
用意されていた衣装は、白のブラウスに紺の長めのスカート。
清楚な文香にはよく似合う。
ブラウスが用意されたのは、拘束を受けた際でも相手が脱がせ易いものを、と配慮されたのだろう。
オーダーされた飲み物が仁志によって運ばれ、一言二言交わしたのち、文香は「待機」に入る。
「旦那の感想はどうだった?」
「そうですね、、『気に入った』が半分、『心配だ』が半分、ですか」
そのままを真壁に答えた。
「そう言えばおとといの男性、、オーナーの知り合いの方なんですか?」
「、、よくわかったね」
つまり、、私の初日にも「仕込み」の男性が、、だったのかな、、、恥ずかしくて聞けないが、、、
たったそれだけのやり取りの間に、もう文香に声を掛ける男がいた。
先日の、仕込みの男性と同じくらい、、かな、
恐らくは40代であろう、清潔感のある、どこかこういった場には似つかわしい人だ。
初日勤務のあと、文香に、男性との会話は緊張するか、と尋ねてみた。
彼女は緊張するそうだ。
しかし、バーのほうで接客をしており、さすがに慣れただろう、と指摘すると、
「ここに居る、ということは『したいです』『してもいいですよ』ってことなので、、そういう目で見られてるはずで、、それが恥ずかしいです」
耳が痛かった。
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