七十四
ここから見る限り文香は、嫌がってるようではないが、明らかに緊張している様子だ。
「明日香ちゃん、、嫌なことはしないから言ってね」
ヒロキは文香に少しずつ顔を近づける、、、手慣れた様子だ。
「あのお客さんは『常連』だ。文香の初めてのお客としては最適と言えるよ」
真壁はそう言う。
我々は、、私は、見守るしかなかった。
店内が、どことなくざわつき始める。
このように、女性ゲストが一人もしくは少数の場合、店内の男性の視線はその女性に集中する。
そもそも女性客で溢れかえるようなことも無いのだが。
文香はブース席でなく個席に着いたので、他の男性は原則「手出し」は出来ない。「早いモノ勝ち」がルールだ。手を出したければ、その男性と女性自身の許しが必要だ。
文香はどうするつもりなのか、、、
あくまで彼女は「仕事」でここに居るのだから、拒んでいては仕事にならない。
とはいえ、初のお客を前に、、どこまでやれるか、、
、
私も、自分の「初日」を思い出してしまう、、、
二年前の私は、ある意味今の文香以上に切羽詰まっていた。
ここで仕事が出来なければ、、残金は減る一方だ。
それでも私は、初日は「最後」までは出来なかった。
胸元を開かれ、胸を弄ばれた時点で泣き出し、お客さんのほうから止めてくれた。
当時の真壁にも、
「初日はそんなものだから」
と慰められたのを覚えている。
その文香が、男に唇を奪われた。
※元投稿はこちら >>