「文ちゃんを追わなくていいの?」
ひとりブースに残された慎吾は、深刻な表情で思い詰めていた。
「、、、僕には見れません」
そうだろうと思う、、
短い時間ではあるが、この慎吾という男の、実直な性格はよく解った。
「そうかい?文香ちゃんは、、見て欲しいと思ってるんじゃないか?」
戻ってきた夫の指摘に、
「そんなことは、、ないと思います。文香ちゃんはそんな子では、、」
「それは同感だ。そんな子だとは私も思わんよ。ただ、私の言ってることはそういうことじゃないよ」
俯いていた顔を上げ、慎吾は夫を見た。
「『ありのまま』、というのかな、、文香ちゃんが君に見せようとしてるのは」
真剣な眼差しで夫の言の続きを慎吾は待った。
「文香ちゃんが君に問いたいのは『受け入れる覚悟』、、ではないかと思うんだ、、かつて私がそうであったように」
当然だが、私には夫の言う『意味』が誰よりも解った。
「、、、上に、、行ってきます」
覚悟を決めた表情で、慎吾は立ち上がり、上階の、文香が犯されている部屋へと向かった。
「あなたは、、行かないの?」
沈黙のままグラスを傾ける夫に尋ねると、
「見たいとは思わないし、きっと文香ちゃんも、やたらと見られることは望んではいないだろう、、、麻由と同じようにね。
でも麻由は行ってきたら?二人を助けてあげなよ」
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