「文ちゃんなら、、ここに来てるわよ」
慎吾の言を伝えるべく、私は文香がいる事務所へ向かう、、
文香はようやく体調が回復し、今日から「出勤」している。
「そう、、ですか。慎吾さんには私も御礼を言わないといけないので」
文香は、私と共に慎吾と夫の待つフロアへ戻った。
「慎吾さん、、この間はありがとうございました」
深々と頭を下げる文香、、、そして顔を上げると同時に手のリングを外し、
「麻由さん、、どうぞ。ここではリングをしてないと、、、」
文香は、慎吾の前で自分が今からここでの「勤務」に入ることを暗に伝えた。
「文香ちゃん、、あの、、」
文香は慎吾の言葉を遮る、
「お話って、、やはりそういうお話ですよね、、、
私なんかをそんな風に思って下さることは嬉しく思います。
だけど、、慎吾さんもご覧になった通り、私はこんな女ですよ?私なんか忘れたほうが、、」
今度は慎吾が文香の言葉を遮り、
「忘れられないから今日、ここへ来た、、二人で話せないかな、、だから取り敢えずもう一度リングを、、」
「私は、、仕事中です」
そんなやり取りの最中でも、文香目当てにお客が群がる。
「あの、、明日香さん、我々もいいですか?」
二人組の男性が声を掛けてくる、
「あ、、邪魔だから私たちは向こうへ行こう、麻由」
夫に促され、私たち夫婦は文香と、そして慎吾を残して他ブースへ退散する。
「慎吾くんを置いてきていいの?」
私は夫に尋ねる、、
「文香ちゃんが慎吾くんを試そうとしてると思ったからさ、、、だから置いてきたんだけど」
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