一人で寂しく辛い思いをしている少女の前にに、王子様が来てくれた。
でも、なぜきっかけがお尻なの?
前の日に、変態されて裂けてしまったお尻のこと、王子様に知られてしまった。
でも、良いわ。
二度と会うことは無いはず。
惨めな痩せた狐でも、せめてちょっとだけ、夢を見て良いかしら..。
茉莉香は、乏しい想像力を懸命に働かせて、あの男性とのことを、色々と空想した。
もし私の本当のお母さんが生きていてくれたら、「今日、素敵な男の人と出会ったの!」って話すんだ。
お母さん、きっと喜んでくれると思う。
もし今度、また偶然に会えたら、素直に今日のお礼を言うの。
あの人、デリカシーが無さそうで、優しかったから、もうお尻のことなんか触れないで、楽しいお話をしれくれるんじゃないかしら。
もし、そうなったら、私、死んでも良いわ..。
実母の千鶴が亡くなってから、初めてする少女らしい空想だった。
実際の葛城真は、幼い茉莉香が思うより、ずる賢い大人だった。
茉莉香と別れた後、直ぐに車を近くのコインパーキングに停め、徒歩で茉莉香の後を尾行し、家を突き止めた。
あとは、調査の道のプロに仕事を依頼する。
葛城の母方の祖父は、かなり有力な政治家の腹違いの弟だ。
若い時は、兄に代わって非合法な仕事をこなしてきた。
その伝で、名前だけの調査会社とは違う、本当の仕事をするプロを雇った。
一週間で報告があった。
両親と妹と四人家族だが、母親は継母。
継母の主導により、実の父親も虐待に参加している模様。
長女の茉莉香に対して、2つ年下の桃香は甘やかされている。
虐待の内容は、衣食住に関するだけでなく、暴力と性的虐待もされている可能性が高い。
その一つとして、変態趣味を有する権力者、裕福な者に対して、身柄の貸し出しをされている模様。
真は、あの痛みの中でも、本当に傷ついた狐のような、油断無い必死な視線を思い出した。
そうしないと、生きていけなかったのかな?
年が改まったが、奴隷の茉莉香は、年末年始は恐ろしい忙しさで、ただ、妹の桃香から
「お姉ちゃんの作ってくれたお雑煮、とっても美味しい!」
と感謝されたのが、唯一の嬉しい記憶だった。もっとも、そのお雑煮も、お餅どころか、青菜さえ茉莉香の口には入っていない。
2月になった。学年末試験がもうすぐ始まる。
その勉強もしたいのに、また継母が茉莉香に、貸し出しがあることを告げた。
日曜日に貸し出されて、翌日は帰宅せず、直接学校に登校しなければならない。
茉莉香は、自分を責める道具が入ったバッグを持たされて、指定された公園のベンチで、相手を待った。
責め具の入ったバッグの他に、学校の教科書、ノートを入れたカバンを持って出れたのは、幸いだった。
茉莉香は、寒風の吹く中で、教科書を読みなから、今日自分を買った男が来るのを待っていた。
約束の印であるモスグリーンのマフラーを首に掛けた男が来た時、茉莉香は
「明日、もう学校に行かない。
その前に、私、死ぬ..。」
と思った。
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