目を覚ますと、もう日が高く登っているのが窓からの光でわかった。
二日酔いではない気怠さを感じながら、手をついて ようやく体を起こした。
「あ、起こしちゃった?」
頭を振り意識を取り戻そうとする俺に、麻衣子が明るい声をかけてきた。
見ると昨日とは違うTシャツとスカートに着替えていた。
壁の時計は10時を指していた。
「・・・ああ、いや、、、普通に目が覚めただけ」
なんとか言葉を出した俺を、少し心配そうな麻衣子の顔が覗き込んだ。
「大丈夫?二日酔い?」
「いや、ほんとに大丈夫・・・あ、今日ってバイトだっけ?」
「うん、午後からだけど、今日は引き継ぎあるから早めに行かなきゃ・・・だから、もうすぐ出るね」
目の前の麻衣子には、昨日までと何も変わらない笑顔があった。
明るい声、少しボーイッシュな印象の言葉使い、無邪気な笑顔・・・ストレートの黒髪まで、全てが何もかも変わらなかった。
もしかして、アレは夢だったのだろうか・・・そんな風にさえ思えた。
「・・・佐藤は?」
「しょ・・・・・・アイツは さっさと帰ったよ、今頃は家で寝直してるんじゃない?」
しょ・・・その言葉は、今日までは気づかなかったかもしれない・・・けれど昨夜の光景を見た俺には、その先に『ショータ』と続くのがはっきりとわかった。
そして、佐藤の事をいつからか名前で呼ばなくなった麻衣子の言葉遣いがわざとだったんだと・・・隠すために、ボロを出さないために意識的だったんだと確信していた。
俺は麻衣子の手を引き寄せ・・・キスをした。
※元投稿はこちら >>