その日の放課後。
麻衣子は学校を出ずにクラスの中で彼氏を見送った。
特に違和感を感じるはずもなく、彼氏は足早に去っていった。
数人が気怠そうにカバンを担ぎ、愚痴をこぼしながらながら部活向かった。
何人かが遊ぶ計画を話し、笑い合いながら教師を出た。
一人ずつ、数人ずつ、次々とクラスメートが教室を出て行く。
放課後をしらせるチャイムが鳴り終わってから15分もしないうちに、クラスの中にはバラバラに それぞれの席に座った4人しか残っていなかった。
廊下を歩く生徒の人数まで少なくなった頃、直樹が立ち上がった。
自分の席から一直線に麻衣子の座る机に近づいていく。
それを見てようやく、残りの2人が席を立つの
椅子が床を擦り、ガラガラッと音を立てた。
直樹はいつもと同じように他人の椅子を引っ張って、麻衣子の左側に座った。
少し遅れて佐藤祥太が麻衣子の右側に、加藤健二が彼氏がするように椅子を跨いで正面に座った。
佐藤祥太は緊張と興奮に強張った顔で、加藤健二はヘラヘラと笑いながら麻衣子の顔を見ている。
麻衣子は真っ赤にした顔で俯きながらも、無言で自分を見る2人の視線を感じていた。
廊下から足音が消え、グラウンドから部活の音が まるでずっと遠くの音のように聞こえていた。
そんな静かなクラスに、直樹が声を出した。
「じゃ、さっそく見てみようか」
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