ただ、りえにとっての誤算だったのは、このコンビニには以前からりえに思いを寄せる30歳前半のサトシが
アルバイトしていたことだった。
あまり人との繋がりが苦手で、数年前まで引きこもっていた男だが、
身長は180cmぐらいある巨漢。
体は大きいが気が弱いことから、昔から太っていたこともあり、デブでキモイと散々虐められてきた過去があった。
父親は大手企業の重役ということもあり、家族カードを持たされていることもあり実際働かなくても良かった。
ただ、ずっとこのままと言うわけにも行かず、将来を心配した母親や外部の人たちからの勧めで
社会に馴染むための訓練としてバイトを始めた。
最初は全然やる気もなかったが、当然もの覚えも悪く、慣れないレジなどに入る時は、お客のイライラがモロに伝わってきた。
中にはキレる客もいた。
そんなバイトを始めた頃、小柄で可愛らしいりえが買い物にきた。
優しそうで清純なオーラを放っていた。
一目惚れだった。
仕事に慣れないのと、自分のドストライクの女の子を前にして、いつもよりレジがもたついてしまった。
でも怒ることもせず、りえは優しく見守ってくれた。
なんとか無事に会計が終わった。
りえ
「ありがとうございます。頑張ってくださいね」
購入物を受け取る際に、初心者マークが名札についていることもあり、優しく笑顔で声をかけた。
それがサトシにとっては天にも昇るほどの嬉しさだった。
それをきっかけにドンドンとりえに惚れていった。
いつの頃からかサトシにとって唯一の癒しがりえだった。
笑顔で「ありがとうございます」
と声を掛けてくれることが働きがいであり、生き甲斐と言って過言ではなかった。
もちろん、りえが旦那さんと一緒に来ることもあり結婚していることを知った。
でも、自分の中でりえへの思いは膨れ上がっていくばかりだった。
あの可愛らしい笑顔を自分のものにしたいと本気で思った。
その思いは段々とエスカレートしていき歪んだ愛情へと変わっていくことになる。
りえは近所ということもあり、メルカリなどの荷物を発送する時に、このコンビニを利用することが頻繁にあった。
サトシはいけないことと思いながらも、もっとりえのことを知りたくて、
りえへ対する愛から、住所の入った伝票の写真を撮ってしまった。
このコンビニのバイト以外は、まともに働くこともなかったサトシはいつしかりえのストーカーとなっていた。
サトシはちょうどこの頃から午前中シフトはほとんど入らなかった。
その理由は2つあった。
1つ目は、りえが午前中はあまり来ないから
2つ目は、りえ宅の家庭ごみを持ち帰るため・・・
住所を知ってから、りえにもっと会いたくて、ずっとりえを監視していた・・・
そして、いつしかゴミ出しのタイミングを把握し、りえが出すゴミを持ち帰っていた。
結婚しているりえに対する、どうにもならない思いが、どんどん歪んだ方向へ加速させていった。
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