肩に触れた男の手は熱い。
対照的に冷え切った少女の躯が、ゆっくりと床に押し倒されていく。
冷たく硬い床に仰向けに押し倒されたコダマは、いつの間にが、膝に絡んでいたパジャマのズボンが無くなっていることに気付く。
男の左右の手が、少女の左右の膝を大きく広げ始めた。
抵抗しなければならない。
コダマ自身の貞操を守る為、勿論、それもある。
だが、何よりも男に過ちを犯させない為に、だ。
今ならば。
今ならば、全てを無かったことに出来るかもしれなかった。
『もぉ。お父さん、飲み過ぎだよぉ。』
明日の朝、そう言ってお終いに出来るかもしれないし、そうしなければならない。
たった三人の家族。
三人の内、年嵩である二人が道ならぬ関係となるわけにはいかない。
だが、男は少女の躯にのしかかってくる。
ゆっくりと緩慢な、だが、着実な動作を続ける男に向かい、最後の願いを呟くコダマ。
しかし遅かった。
いや、遅すぎた。
コダマが最後の願いを呟いた瞬間、男の股間に備わる肉の槍、その穂先が肉の洞窟、、その入り口に充てられていた。
反射的に男の身体を押し退けようとする少女は、小さく悲鳴を漏らす。
徐々に・・だが、確実に熱く硬い肉棒が、穢れを知らぬ少女の肉襞で構成された洞窟を押し開きながら奥に向かう。
眼の無い禍々しい蛇が鎌首をもたげ、その鱗で幼い粘膜を掻き毟る。
ぁ。
ぁ。
「やっ!い、痛っ!ひぐっっ!」
何かが千切れたような感覚が、激痛とともに下腹部の中心で爆ぜた。
その瞬間までは存在していた『抵抗しようという意思』が少女の中から雲散霧消していく。
脱力するコダマ。
悲しかった。
こんなかたちで初めての性行為を経験することになるとは。
悔しかった。
理不尽な暴力に敗北を喫せざるを得ないとは。
哀しかった。
父と呼び、家族として過ごした十年に渡る月日は何だったのだ。
惨めだった。
自宅の玄関先で服を剥ぎ取られ、押し倒されるとは。
或いは、直前まで耽っていた自慰がいけなかったのかもしれない。
熱く潤い、解ぐされた性器であったからこそ、理不尽な暴力を受け入れてしまったのだろうか。
後から後から湧き出づる後悔と自責の念。
見開いて薄暗い天井を見つめる左右の眼から、コダマは涙を流していた。
そうこうするうちにも、下腹部の芯に沿って奥に進み続ける肉の槍。
最深部に達したのだろうか、男は動きを停めた。
不意に少女は左右の脚を男に抱え上げられる。
「え?」
これで終わりではないのか。
これ以上の何かが始まるのか。
そう想った瞬間、再び下腹部の芯に激痛が爆ぜる。
しかも、今度は続けざまに、だ。
ぐチゅ・・ぬプっ・・ジゅぽ・・
淫らな音が二人の交接部から漏れ始めた。
男が腰を前後に動かし始めたのだ。
少女にしてみれば堪まったものではない。
幼い生殖器官、その肉襞が、熱く猛った男性器に繰り返し擦すられているのだ。
勿論、潤っているとは程遠い状態あることは言うまでもない。
コダマにとっては筆舌に尽くし難い痛み。
繰り返される往復運動。
いつの間にか、少女は肉体と精神を乖離させていた。
人形のように横たわったまま、痛みを感じながらも、その痛みを無視するかのように冷静さを取り戻していた。
今、しなければならないこと。
それは、この事実を幼い妹に知らせないようにすることだ。
妹にとってオゾましい出来事であることは勿論、家族三人の関係性を引き裂くに違いない。
自分はまだいい。
父も・・まあいいだろう。
だが、幼い妹からすれば、禁断の関係を結んだ父と姉が、どのような関係になっていったとしても不安を煽ることは間違いない。
「!」
男の往復運動が不意に速度を増した。
堪え難い激痛、だが、それ以上にコダマが恐れ慄いたのは次に起こることだ。
それだけは避けねばならない。
初潮を迎えて二年以上は経過している。
妊娠自体に対する恐怖。
そして躯を裡から穢されることに対する少女らしい潔癖さに由来する嫌悪感。
その時は迫っていた。
※元投稿はこちら >>