十四歳のコダマ。
勿論、男性経験は無い。
自慰の経験こそあるものの、それとて、おっかなびっくりの試行錯誤の過渡期に過ぎない。
性に関する知識とて保健体育の教科書、或いは友人とのガールズトークの範囲に留まっていた。
『知らない人に・・』
『知らない場所に・・』
生前の母が口にしていた幾つかの注意事項。
それは『女の子が身を守る為に』という遠回し、かつ暗黙の不文律に他ならない。
少なくとも少女は母の教えを守り、リスクを回避する為の行動をとってきたつもりであった。
自重していたこともあったが、そもそも覚えている限りでは、危険な場面に出会ったことはない。
だが、今はどうだ。
長年に渡り家族として暮らし、『父』と呼んでいた男ではないか。
しかも亡き母の連れ合いなのだ。
今は自宅に居るのではないか。
しかも自ら施錠をした直後、自宅玄関の内側なのだ。
何が悪かったのだ。
何をどうすれば良かったのだ。
不用意に家に招き入れたからか。
信じていたのが間違いだったのか。
守ってくれる存在だという盲信自体が不味かったというのか。
その間にも男は距離を詰め、ついに二人の間に距離は存在しなくなる。
男の右手がコダマの細く薄い、そして華奢な肩に触れた。
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