コダマは十八歳、高校三年生。
ヒカリは十四歳、中学二年生。
時を経る毎にヒカリと家族の溝は深まるばかりであった。
その晩、家にはコダマ一人きり。
コダマの生理、ヒカリの在宅状況、父の仕事等の理由から、二ヶ月近くに渡りコダマは情欲を満たしていなかった。
狂った父により最後に犯されてから半年以上が経過している。
・・オナニー・・しよっかな・・。
不意に頭に浮かんだ考えは、コダマを魅了して止まない。
明日にも月の障りが始まりそうなコンディションが、コダマの躯を疼かせる。
いそいそと入浴の支度を整えたコダマは、浴室の手前にある脱衣所で服を脱ぐ。
一糸纏わぬ姿を姿見に映してみれば、そこには若き日の母に酷似した裸身があった。
父を狂わせる牝の姿。
その牝を狂わせる父との肉体関係。
その背徳の暗い悦びに魅せられた自分自身が、欲情の余り自慰に耽ろうとしている。
滑稽であった。
ここまで穢れた躯なのだ。
自慰で我慢する必要は無い。
行きずりの男に抱かれれば良い。
・・ヒカリみたいに・・。
その想いが頭の中を過ぎった瞬間、コダマは自分自身が信じられなかった。
父と交わり禁断の行為に耽る自分より、見知らぬ他人に躯を開く妹を蔑んでいるのだろうか。
そんな自分自身を更に蔑むコダマ。
ああ。
硬さから脱却しつつある乳房が張っていた。
乳房の先端に尖がる乳首に触れた瞬間、痺れるような快感が奔る。
自分自身を罰するように敢えて乱暴に乳首を捻じれば、更なる快感が広がっていく。
潤い始めたばかりの性器に指を挿れれば、微かな痛みが奔る。
その痛みが望みであった。
あ。
あっという間に蕩け始めた肉が、容易く指を受け入れる。
なんだ。
一番、狂っているのは自分ではないか。
家族を蔑みながら憎み、自分自身をも蔑みながら憎んでいる自分自身。
自嘲しながら浴室に入り、ドアを閉めたコダマ。
家の中には一人。
密室だ。
心置きなく自慰に耽ることが出来る。
指を、手を蠢かせれば、淫らに湿った音が浴室の壁に反響する。
自慰により自分を昂らせる術より先に、男と交わる快感に馴染んでしまった為か、コダマは自分で自分の昂ぶりをコントロールすることが苦手であった。
仲々、果てることが出来なかったり、不意に果ててしまったり。
この日も同じである。
果てそうで果てられないもどかしさ。
がちゃ、ギッ、バタン・・。
不意に誰かの帰宅を知らせる音が響く。
妹であろう。
自慰を中止してシャワーを浴びている体裁を繕うコダマ。
・・イケなかった・・。
不満は残るが仕方ない。
特に下腹部を念入りに洗い、浴室から出て躯を拭っている時であった。
・・ノゾミ・・ノゾミ・・。
耳にした父の呟き声。
父が狂っている証である。
絶体絶命であった。
風呂上がり。
全裸。
一刻も早く脱衣籠に入っている衣類を身に付けねばならない。
だが、コダマはそうしなかった。
抱かれたかった。
貫いて欲しかった。
ただの牝に成り果てたかった。
妹は不在なのだ。
未だ帰宅する時刻ではない。
誰に遠慮する必要があろう。
バスタオル一枚を躯に巻いただけの姿。
飢えた獣の前に生肉を転がせば、どうなるかは考えるまでもない。
そのままコダマは脱衣所のドアを開けた。
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