三度目に襲われて以来、二年近くが経っていた。
ほぼ変わらぬ日々が続いてはいた。
定期的に父と交わる日々。
それでも年に一度か二度は父が狂う日があった。
二年間で三度だ。
自然災害のようなものなのだろうか。
海辺に住めば海によって。
山辺に住めば山によって。
そこに住む以上は、受け入れざるを得ない定期的なリスクとして。
リスクを回避しようとするのならば、住む場所を、生活の手段を変えねばならないのだろうか。
コダマの場合、住む場所、生活の手段という金銭的問題もさることながら、妹に事実を、、父と姉が禁断の関係にあることを知らせない、父から妹を守らなければならないという理由があった。
経済的に自立出来たとしても、父と妹を二人だけには出来ない。
それ故に終わりの見えない日常は彼女を惓ませていく。
そしてコダマにとって致命的、かつ父と離れられない厳然たる理由。
それは少女を魅力してやまない背徳の関係。
何よりも、その関係を強要される際の屈辱がもたらす暗い悦び。
妹、ヒカリも成長するにつれ、父と姉のただならぬ関係に疑惑を深めていく。
具体的に何が起きているのかは知らず、ヒカリだけが爪弾きに遭っているような錯覚。
中学生になった妹は、反抗期でもあり家族に対して心を閉ざす。
いきおい、ヒカリは父と姉との間に一線を画すようになっていた。
皮肉な話ではあった。
妹を孤立させない為、家族を維持する為にコダマが文字通り躯を張った行動が、家族を崩壊させつつあるのだ。
真実を隠せば隠す程、妹は心を閉ざす。
真実を明かせば、家族は完全に破綻する。
いつの日にか訪れるであろう破綻に怯える日々が続いていた。
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