・・がちゃ・・ギッ・・ごシゃ・・
手元が定まらない程に酩酊した為か、父は手にした鍵を鍵穴に差し込むことすら儘ならないらしい。
コダマは間接照明に照らされたダイニングを抜け、玄関に向かう。
がちゃり
玄関の鍵を内側から開け、ドアを開ければ案の定、秋の冷たい夜気に混じってアルコールの匂いが漂ってきた。
「お帰りなさい・・。」
少女は家族の醜態から視線を逸らしながら、呟くように父を迎えた。
父を玄関に招き入れながら後ろ手にドアを閉め、施錠をするコダマ。
だが、父の様子がおかしい。
呆然と立ち尽くしたまま、父は義娘を見つめ続けている。
「どうしたの?お水?」
と、不意に崩れるように父はその場に膝を突いた。
戸惑いの表情を浮かべた義娘を膝立ちのまま見上げる父。
その唇が微かに動く。
そして父の唇は同じ動きを繰り返す。
「?」
怪訝そうな表情を浮かべながら、コダマは父の横にしゃがみ込む。
しゃがみ込むと同時に父の唇から生じている呟きが少女の耳に届く。
・・ノゾミ・・ノゾミ・・ノゾミ・・
そうか。
今、コダマは母のパジャマを身に付けている。
父は母と、、妻と義娘を見紛うているに違いない。
「違うよ。コダマだよ・・。」
苦笑混じりに声を掛けつつ、父を立ち上がらせようとした少女の身体は不意に抱き締められた。
「ノゾミ・・ノゾミ・・」
会いたかった・・。
死んだなんて嘘だ・・。
そう呟きながら泣く父。
身動ぎすら出来ない義娘。
それは突然であった。
コダマの唇に父の唇が押し付けられた。
驚愕のあまり少女の身体が硬直する。
酒臭い息とともにコダマの口の中に父の、、いや、男の舌が捩じ挿れられた。
生温かく湿った肉が少女の口の中で蠢めく。
パニックに陥ったコダマは、何が起こっているのかすら理解出来ていなかった。
それとは裏腹に男は、取り戻した妻の存在を確かめるかのように、その躯に触れていく。
手が・・指が・・。
いつの間にか唇が・・舌が・・。
男が触れる先、それは生前の妻を愛する際の記憶に依存しているのだろうか。
背中に・・肩に・・。
ゆっくりと撫で回しながら。
首筋に・・唇に・・耳朶に・・。
ねっとりとした男の舌が、少女の敏感な部分を這い始めていた。
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