それは残暑もその気配を潜めた頃。
未だ帰宅せぬ父。
だが、娘は楽観視していた。
昨夜、二人は交わったばかりなのだ。
それに定期的に娘の躯を抱くようになってから、父が狂うことは無くなっていた。
泥酔して帰宅することは稀にあったが、娘に対して狼藉を働らく気配は無い。
一年近くに渡る予定調和の日々は、少女に安穏な生活を供していた。
・・がちゃ・・ギッ・・ごシゃ・・
コダマを深い眠りから呼び戻す耳障りな金属音。
時計を見れば既に深夜一時を過ぎている。
・・近所迷惑・・。
渋々、布団を抜け出した少女は、それでも一枚の長袖シャツを手にして部屋を出る。
Tシャツの下、急速に丸みを帯び始めた乳房が、歩くリズムに合わせて揺れている。
膝丈のハーフパンツだけでは肌寒い程だ。
シャツに袖を通しながら、玄関に向かうコダマ。
玄関の内鍵を開け、ドアを開くとムッとするようなアルコール臭に包まれた父が立っていた。
朝起きてからシャワーを浴びれば良い。
そう思いながら父を寝室に導く娘。
スーツを脱ぎ始めた父を見届けると、少女はドアを閉め、自室に引き上げる。
今度こそ、朝まで眠ろう。
そう思いながら脱いだシャツをハンガーに掛け、布団に潜り込むコダマ。
ゆっくりと眠りに引き摺り込まれ、心地良く微睡んでいる時であった。
・・気持ちいい・・な・・。
微睡みの心地良さとは異なる感覚。
だが、何かがおかしい。
この心地良さは躯から生じる感覚だ。
眠りのもたらす心地良さとは明らかに違う。
あぁ・・
これは・・この気持ち良さは・・
アレに似ている・・。
だが、今、その感覚を味わっているのは変だ。
自分は布団に潜って眠っているのだ。
アレをしているわけではない・・筈だ。
変だ。
眼を覚まさなければならない。
自分の中にある眼を覚ます為の回路のようなものが壊れているのだろうか。
横顔を布団に押し付けていた。
俯伏せになっていた。
いや、俯伏せとは少し違う。
イスラム教徒が祈りを捧げるような姿勢。
土下座をしているような姿勢。
腰が持ち上がっていた。
いや、誰かに持ち上げられているのだ。
持ち上げられて腰を貫かれている。
熱くて硬くて気持ち良い何かに貫かれている。
貫いている『それ』が、ゆっくりと前後に動いていた。
誰かが何かを呟いている。
・・ノ・・・ゾ・・ミ・・。
一瞬にして少女は覚醒した。
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