「・・お願い・・。」
涙ながらに自分を抱いてくれるように父に迫る少女。
その少女は仮にも娘と呼ぶべき存在である。
しかも男にとって、もう一人の娘、、少女からすれば妹を守る為の申し入れなのだ。
堪まらなかった。
それら全ては自分自身の不甲斐無さに端を発しているのだ。
男は泣いていた。
だが、泣いている場合では無かった。
娘の、、コダマの論理は理に適っていた。
少なくとも、それを論破出来る材料が男には無い。
或いは少女の唱える主張には、破綻があるのかもしれなかった。
だが、今、他に採るべき策は無い。
少女に導かれるまま、寝室に脚を運ぶ男。
服を脱いで待つように言い残した少女は姿を消す。
これでは逆ではないか。
そんな想いが頭を過ぎるが詮無いことだ。
再び姿を現した少女は、大小何枚かのタオルと小さなパッケージを手にしていた。
「・・これ・・。」
そう言って羞らいながら手渡されたパッケージに印字されている文字を眼にした瞬間、男は息を呑む。
避妊具であった。
妹と別れた後、薬局に設置された自動販売機で買ってきたのだという。
必ず使って欲しいと告げる少女の声は細い。
はしたない思い付きと恥じているのか、少女は全身を朱に染めて俯いている。
だが、少女を、、娘を貶めているのは、他でもない男自身なのだ。
逆説的ではあるが、少女の気持ちに応える為に男が出来る唯一のこと、、それは彼女を抱くことであった。
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