ひとしきり泣いたコダマは、嗚咽を堪らえながら顔を上げる。
初冬の午前中。
冷え冷えとした床の上、少女の躯は冷え切っていたが、真に冷え切っていたのは躯ではなかった。
こうしてはいられない。
少なくとも、今日、今から確かめなければならないことがある。
これは実証実験に過ぎない、そう自分自身に言い聞かせながら娘は父に申し入れた。
「今から・・・・もう一度、あたしと・・してくれる?」
凄まじい内容であった。
唖然とする父。
内容とは裏腹に淡々とした少女の口調。
『ね、そこのお醤油、取ってくれる?』
それくらいの口調である。
戸惑う父。
コダマは淡々と説明を始める。
泥酔し、正気を失った父は、娘を妻と見做して男性機能を発揮することが可能になる、それは既成事実だ。
だが、正気を保ったまま、父はコダマと、或いは他の女性との性行為に及ぶことは可能なのだろうか。
その確認がしたい、いや、確認しなければ次の手を打つことが出来ない。
父は反論する。
そんなことは許されない。
それは禁忌だ。
娘は反駁する。
その通り。
許されないことだ。
だが、その禁忌を破ったのは、当の父本人ではないか。
怯んだ父は黙り込むが、やや置いて新たな反論を唱える。
或いは順序の問題に過ぎないかもしれないか、自分が娘以外の女性との性行為の可否を先に確認すべきではないか。
確かにそうかもしれない。
だが、仮に父が自分以外の女性との性行為が可能であったとしても、さほど状況は好転しないと考えているコダマ。
少女の決心、それはあまりにも凄絶に過ぎるものであった。
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