それは残暑の気配が消えつつ、代わりに朝夕は肌寒く感じ始めた頃であった。
金曜の夜更け、父は未だに帰宅しない。
また、泥酔して帰宅するのだろうか。
小学生の妹、、ヒカリは既に就寝して久しい。
何日か続いた秋雨により、洗濯物の乾き具合が望ましくない。
かといって寝巻きが半袖のTシャツだけでは、肌寒いかもしれない。
ふと思い付いた少女、、コダマは、母が遺した衣装ケースを開けてみる。
あった。
母が来ていた長袖のパジャマ。
入浴を済ませたコダマは、いかにも中学生然とした下着に脚を通すと、素肌の上から母の遺したパジャマの上下を身に付けた。
心中に悪戯心があったのも確かだ。
だが、鏡の中に映った自分の姿を眼にした瞬間、コダマは愕然とする。
そこには死んだ筈の母の姿があった。
勿論、三十代で死去した母に較べれば、鏡に映る中学生のコダマは明らかに若く、そして幼い。
そもそも未だ成長過程にある少女は、躯付きからして華奢で肉が薄い。
だが、そこには明らかに若き日の母親が映っていた。
・・お父さん、帰って来たら・・
ビックリしちゃうな・・。
密かに一人ほくそ笑みながら、自分の部屋に戻ったコダマは布団に寝転がり、何するともなく躯に手を這わせ始める。
金曜の夜、父は不在、妹は就寝中。
自慰に耽るには具合の良いシチュエーションであった。
パジャマの上衣の上から、その手を胸に這わせるコダマ。
そっと触れるか触れないか。
そんなギリギリの感覚、、くすぐったいような甘い痺れに溶けてしまいそうな躯。
既に年頃の少女として、標準的な膨らみを主張する乳房を服の上から撫で摩する。
それだけでふたつの敏感な肉の芽が尖がり始める。
くふっ・・・。
思わず甘い吐息を漏らす少女。
誰もいない筈だが、思わず周囲を見回し、改めて誰の眼にも触れないことを確認する。
・・カーテン・・開いてた・・。
マンションの五階なのだ。
よもや覗かれることはあるまい。
コダマは敢えてカーテンをそのままに、ゆっくりと手を動かし続ける。
・・もし、誰かに覗かれていたら・・。
そう考えただけで頬が、、いや、全身がカッと火照る。
自慰に耽っている姿を誰かの視線に晒す。
そんな妄想に耽ること自体、はしたない。
はしたない妄想に取り憑かれている自分は、異常なのではないだろうか。
背徳の想いを味わいながら、それでも少女の手と指が動きを止めることはない。
肌寒いかもしれない、そう思っていたにも関わらず、コダマの躯は汗ばみ始めている。
胸を這っていた左右の手のうち、右手の位置をずらしていく。
ずらした手は徐々に下方に向かっていく。
ゆっくりと。
故意に自分自身を焦らしながら、少女は肌が粟立つような感覚を噛み締めて手を動かす。
コダマは掌全体でヘソから下、特に下腹部を中心に撫で回し始めた。
・・汚しちゃう・・。
自分が『濡れる』ことに気付いたのは、さほど昔のことではない。
昂ぶるだけも秘裂を潤す僅かに粘りのある液体。
己れの躯を悦ばせる、もしくは精神を昂らせることにより分泌する淫らな汁の使い方を知る少女は、下半身を覆う衣類を脱ぎ去った。
既に『潤う』、『湿る』などというレベルではなく、『滲み出ている』と表現するべき状態となっている。
コダマは、、未だ男を知らない故に、、慎重に指を性器の入り口に這わす。
疎らに生えた若草に周囲を彩られ、肉襞で構成された狭い洞窟。
その洞窟に分け入った者はおらず、当面の間、それを誰かに許すことも考えてはいない。
・・いつかは・・
誰かに『それ』を許すのだろうか。
そう考えた瞬間、指先の動きが慎重さを増す。
挿入が目的ではない。
むしろ、それは絶対的な禁忌だ。
滲み出した淫らな体液を利用して、一時だけの快楽を味わうだけだ。
自分自身に対して言い訳をしながら、コダマは指の腹で浸み出した蜜を掬う。
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