舞台は現実に戻る。
勿論、父も微に入り細に入り、全てにおいて克明な描写をしたわけではない。
だが、過去の経緯が今、眼前に控えている課題の解決に必要とあれば、仕方がなかった。
コダマとしては所在が無いコトこの上ない。
父と母の性生活について興味が無いことはないが、聴くこと自体が気恥ずかしい。
いや、気恥ずかしいを通り越し、禁忌に対する畏れに近いかもしれない。
いずれにせよ、性的不能者たる父が母と出会い、男性機能を回復した父は、ヒカリを設けつつ極く普通の結婚生活と性生活を送っていた。
「・・お父さん、さっき・・さ・・」
先刻、父は妻であるノゾミ以外は、抱くことが出来ないと言っていた。
それは逆に言えば、妻、、コダマから見れば母であるノゾミであれば、抱くことが可能だということだが、それらは父と母が出会う以前の状況に基づく事実と言えよう。
妻と出会って以降、父が妻以外の女性との性行為を試したことが有るのか無いのかは、確認すべき点であるのは間違いない。
「コダマの言うことは分かるよ・・」
だが、幸か不幸か、父は母との性行為が可能だと分かって以来、母以外の女性との性行為を試したことはないらしい。
『幸い』という意味では、父が母以外の女性に興味を示さなかったことは、娘として、家族として喜ばしい限りだ。
『不幸にして』という意味では、その確認、、つまり父が今尚、母以外の女性に対しては性的不能者であるのかが明確でないことだ。
現時点で明確になっている事実、それは父が抱くことが出来たのは、、結果論ではあるが、、生前の母であるノゾミと・・その娘であるコダマのみだ。
内心忸怩たる想いを噛み締めながら、コダマは父に問い掛ける。
「ね、正直に言って欲しいの・・。」
娘の、、コダマの外見が妻であるノゾミに似ているから、それが可能なのか、と。
分からない、と答える父。
酒に呑まれて正気を失っていたことは事実であるとともに不確定要素なのだ。
コダマにも、それは分かる。
分かるが、しかし・・。
「・・真実に・・大事なことなの・・。」
少女の声は掠れていた。
打ち拉がれ、悄然としている父。
これ以上、父を追い詰めるのは本意ではない。
だが、まだ父に話していないことがあるのだ。
話して明確にしてから、適切な対策を打たなくてはならない。
コダマ自身の身を、そして何よりも妹の身を守る為に。
少女は大きく息を吸い、そして吐くと意を決して絞り出すように言葉を紡ぐ。
「・・あたし、さっき言ったよね。」
震える声で事実を伝えるコダマ。
少女の股間から滲んでいたのは、破瓜の出血ではなく経血であることは事実だ。
だが、まだ告げていない事実がある。
訝しむような表情を浮かべる父。
「・・二回目なの・・。」
「二回・・目・・?」
限界であった。
少女は泣きじゃくりながら話す。
数ヶ月前の悪夢のような出来事。
初めてだった。
痛かった。
何よりも信じていた父に、だ。
呆然とする父。
「・・覚えてすらいないじゃない・・。」
妊娠したらどうしよう。
誰にも相談出来ない。
父を傷付けたくない。
不安な日々。
妊娠はしなかった。
だが、家の中、家族による被害。
一時として気が休まらない。
・・あたし、お風呂で・・
・・お父さんが出したアレ・・
・・指で・・掻き出したんだよ・・。
「今日だってそうだよ・・。」
おもむろに立ち上がったコダマは、制服を毟り取るようにして脱ぎ去っていく。
父の眼前に全裸を晒す少女。
その肌には何箇所かの掻き傷が残り、乳房には蒼黒い噛み跡、、歯型が残っている。
手負いの獣は挑むような眼をして話し続ける。
「こんな・・こと・・されて・・」
・・好きな人が・・出来たって・・
・・結婚・・だって・・
その場に崩れ落ちた少女は、伏して泣くことしか出来なかった。
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