「ん゛ん゛・・。」
布団の上、仰向けに横たわった妻は、その左右の手を乳房に這わせる。
横たわっているにも関わらず、椀のような両の乳房は盛り上がったまま、その貌を崩さない。
ゆっくりと左右の掌で左右の乳首を転がすように摩するうちに、敏感な肉の芽は反応し始める。
ツンと固く尖がる突起は、経産婦故に色素は沈着しているが、それでも黒ずんでいるというよりは、薄墨色と表現するのが相応しい。
その乳首を妻は指先で摘まみ、捻じる。
そんなに強く捻じったら、千切れてしまうのではないか。
夫が心配する程の強さで捻じられた乳首は、更に尖がる。
「は・・んっ・・」
切なげに妻が喘ぐ。
摘ままれ、引っ張られ、捻じられる乳首。
夫には、いささか乱暴に過ぎるように感じられる程の行為が妻を昂ぶらせてていく。
するする・・
左手は乳房に残したまま、妻は右手を滑らせて下腹部に這わせ始めた。
股間を覆った妻の掌が秘部を捏ね回す。
あ。
さすがに声は漏らさぬものの、妻の唇が半開きになり喘ぎの貌を示す。
妻は敢えてツボを外して刺激を加えることで焦らしていた。
自分自身を、だ。
手の届く範囲の僅か先、指先は触れている、そんな距離を残すことで自分自身を焦らし続ける妻。
まるでペットと遊ぶように。
まるで娘と遊ぶように。
『ここまで・・おいで・・。』
だが、そこに辿り着いても目標は、更にまた僅かに遠去かる。
既に自分が見ていることすら、妻は忘れているのではないか。
それ程迄に夢中になって自慰に耽る妻。
堪まらなかった。
夫の尾槌骨と会陰の中間地点にチリチリと焦げるような感覚が生じる。
初めての感覚。
だが、そんなことには構っていられない。
憤っていた。
妬んでいた。
嫉んでいた。
何よりも悔しかった。
妻は常に満足していなかったに違いない。
妻は満足した振りをしていたに違いない。
妻は夫を憐れんでいたに違いない。
妻は前夫との行為を懐かしんでいたに違いない。
妻は自分でする、、即ち、自慰に耽るほうが昂ぶるのではないか。
或いは、前夫との営みを妻は忘れられないのか。
嫉妬であった。
結婚して以来、努めて考えないようにしていた妻と前夫との性行為。
妻は前夫に何をどうされていたのか。
どこに何をされていたのか。
妻は前夫に何をどうしていたのか。
どこに何をしていたのか。
今、夫の眼前に横たわり、躯をくねらせながら自慰に耽る妻。
その股間からは湿った淫らな音が途切れることなく漏れ始めている。
情けなかった。
だが、その文句を言う権利が自分にあるとも思えなかった。
眼の前で身悶えする妻を苛んでいる前夫の幻影が浮かんでは消える。
夫の会陰を焦がしていた熱が点火し、暗く小さな炎となった瞬間であった。
「あ。」
夫は小さく叫ぶ。
手を止めた妻は、夫を振り返る。
二人の視線の先、そこには夫の股間から生えた肉の棒があり、それは怒張して反り返っていた。
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