◎渇田少年の恋の行方
宏海の高校では、三年分のカリキュラムは六月末までに終えてしまっている。これからは出席日数の調整だけで、登校してもほぼ自習だ。教師は一応教室にいるが、生徒の質問にこたえるのと進学相談が仕事だ。猛烈だった九月の残暑も、最終週にはうそのように消えた。暑すぎる間は、夏風邪を口実に学校を休んでいた宏海も、ようやく登校する気になった。
セミナー前のタカハシ氏の暴言をヒントに、宏海はいわゆる長ランを造った。セミナーから帰ってすぐ、田沼に事情を話して盗撮カメラを渡した。田沼が予備校とどう交渉し、いくら受け取ったかはわからないが、田沼は宏海に「お前の取り分だ」と言って、二百五十万円を手渡した。長ランの一着や二着ぐらい、今の宏海にはどうってことにない出費だ。
登校前に、これまで通り腹にタオルを仕込んで胸との段差を埋めてからサラシを巻き、さらに赤のTシャツを重ねる。雨が降っているので、その上はふつうの学校指定のコートだ。下手に長ランを着ていくと、不良どもに目をつけられるだけだから、羽織るのはクラスの引き戸を開ける直前だ。
勢いよく戸を開けて入ってきた宏海をみて、クラスメートはどっと沸いたが、しょせんは出落ちネタ、みんなはすぐに自習に舞い戻った。この時間の授業は日本史で、担当の若林教諭は、身長はそれほど高くはないが、若くて独身でかなりイケメンだ。若林は「質問がある」という女生徒に取り囲まれていた。宏海が自席につくと、思いつめた表情の渇田少年が隣に座った。この席の本来の主は、若林を独占中で、他の女生徒をイラつかせている。
「あした、暇か?」。渇田少年の第一声だ。宏海は意表をつかれたが「家庭教師が辞めたんで、何もないけど」。
「それなら映画に行かないか? 頑迷館でゾンビ特集をやってるんだ」。頑迷館は、質のいい小品を中心にしたプログラムで、シネコンに対抗して生き残っている、市内唯一の単館映画館だ。数年前に大改装して、カップル席やファミリー席を造り、そこでしゃれたコース料理を提供するというアイデアが当たって、おしゃれなデートコースとして知られるようになった。だが経営者は根っからの映画好きで、ときどきマニアックなプログラムを混ぜてくる。
医者を志すもの、ゾンビ映画が嫌いなわけがない。共感してくれる人間が少ないのが宏海の、ささやかな悩みだったが、渇田少年も医者を目指すもの、話が合いそうだ。「なんだお前ら、明日はデートか? 明日は平日だぞ、おれの前で堂々とサボる相談をするなよ」。若林がタブレットで二人の出席日数を調べながら、割り込んできた。
「渇田は一日休んでいいけど、タカハシ、お前はいったん登校しろ。一限目だけ出席したら抜け出すのは見逃してやる」。特集は初期のゾンビ映画を集めたものだから、それぞれは一時間ちょっと、今の映画より短いが、四本立てだからそれでも六時間近い。上映は十時から、一限目を受けると、一本目はぎりぎり間に合うかどうかになるが仕方がない。
翌日、渇田少年は頑迷館の前に立ち、宏海がいつ現れるか、気が気ではなかった。カップル席は学割が効かないから六千円、さらに昼食として、一人前二千五百円見当のコースを予約してしまったので、すっぽかされでもしたら目も当てられない。というか、カップル席を取ったことは宏海には伝えていない。案内したとき、どう反応するかは、少し心配だ。そうこうするうちに、宏海が駆けてきた。渇田少年はほっとすると同時に、がっかりもした。宏海がいつかみたように、超ミニスカで来るのではないかと期待していたのだが、宏海はぶかぶかのジーンズのサロペットに、厚手の黒のトレーナー、手に大きなリュックをぶら下げて、遠目では田舎のデブの少年だ。
「待った?」服装はダサいが、宏海の声はいつもより、なんとなくかわいい。
「始まっちゃうからすぐに入ろう」。渇田少年は一般席に向かおうとする宏海の手を引いて、有無を言わせず二階のカップル席に押し込んだ。
「高かったんじゃないの。半分だすよ」。宏海の声がさらに女の子っぽくなった。
「バイト代が入ったから大丈夫だ。おごるよ」。宏海がカップル席をすんなり受け入れたので、渇田少年の中で根拠のない自信が盛り上がった。
「走ってきたから暑い。なんか冷たいジュースでも買ってきて」。いきなりパシリ扱いだが、渇田少年、まったく気にならない。
「アイスコーヒーでも注文しようか?」。渇田少年は注文用のタブレットを指さしたが、宏海は、今は自販機ので十分だという。そして、千円札を渇田少年に手渡して、廊下の一番向こう側の自販機にある、1L容器入りのグアバ飲料を指定した。
渇田少年がカップル席に戻ると、宏海の肩や腕がむき出しになっていた。
「暑かったからトレーナーは脱いじゃった」とにっこり笑う。サロペットの横から、丸見えの白いブラジャーがエロい。休み前に見た時よりさらに大きくなっていて、EかFカップはありそうだ。
「ずっと胸ばかり見てるから、感づかれたのはわかってた。見たかった?」
もちろんだ。ブラの下もみたい。宏海の横に座って気付いたが、サロペットが2サイズほど大きいから、腰回りの隙間から白いパンティーも覗ける。たまらずキスしようとしたら「まだ早い」と宏海に止められた。
カップル席は、周囲に話し声が漏れないように防音になっている。三人掛けぐらいのソファーの前には小さなテーブルがある。料理は出来上がると専用の小型エレベータで到着するシステムだ。プライバシーに配慮して、監視カメラはないが、防犯上の観点から、室内は暗くはならず、下の一般席の観客が振り返れば、二人が何をしているかはだいたい想像がつく、しかし今日は平日の午前、一般席には誰もいない。十六室あるカップル席は全部埋まっているようだが、分厚い壁で仕切られているから、隣の様子はわからない。
宏海はテーブルにジュースと、リュックから出した紙コップを並べ、さらに二人分のサンドウィッチを取り出した。「昼まで持たないでしょって、お母さんが作ってくれたんだ」。宏海のお手製と期待したが、まぁこれはしょうがない。宏海はグアバジュースを一口飲むと、サンドウィッチを食べ始めた。渇田少年も一口頬張ると、緊張がだいぶ解けたせいか、食べるのをやめられなくなった。すると宏海が突然、サロペットの左のストラップを外して、ブラをむき出しにし、カップの上から軽くタッチするだけなら触っていいという。渇田少年は宏海をクルッと後ろ向きにさせ、背後から両手を前に回して、猛然と巨乳を揉み始めた。ブラの外し方がわからないので、ハーフカップの上辺から強引に指を侵入させ、乳首をなぶり回した。宏海はまたグアバジュースを口に含むと、軽く唇を尖らせながら振り向いてキスをせがみ、そのまま口移しに渇田少年の中にジュースを流し込んだ。
渇田少年、こんなにうまいジュースは人生初めてだ。お返しに自分もグアバジュースを含んで宏海に口移しすると、全部飲んでくれた。
「あ」と宏海。「何」と渇田少年。「今、イったでしょ」と宏海。宏海の指はいつのまにか、渇田少年のズボンの上から剛直を撫ぜていた。パンツに手を入れて確かめてみたら、たしかに暴発していた。キスの快感に隠れて、自分ではわからなかったのだ。宏海はさっそくリュックを探ると、使い捨てのおしぼりと四枚セットの特売品のパンツを、それも4Lぐらいのデカパンを取り出した。「サイズがわからないから、一番大きいのにした」という。渇田少年は身長一八五で体重は九十キロを超している。宏海は続けて「あと三枚あるから、二回失敗してもいいよ」とやさしいことをいう。リュックの中には、手回しよく消臭スプレーまで入っている。
パンツをはきかえた後、渇田少年は聞かずにはいられなかった。「お前、いつからこういうことしてるの?」
答えは超意外だった。「八歳のころからかな」。
宏海の「初めての男」は、父親の実の長兄、芳作だ。家族で父の実家に帰省するたびに、宏海と相撲を取って畳に転がしたり、縄抜けの練習だといって、宏海を縛ったりしていたが、嫌ではなかった。わら縄できつく縛られてなかなか抜け出せなかったとき、「かわいらしいのが勃ってるぞ」と直接、愛撫された記憶がある。そして八歳のとき、納屋の二階でちんぽを含まされた。それ以来三年ほどいたずらされ続け、今やったようなことはすべて芳作に教えられたのだそうだ。純粋なショタらしい芳作は、中学生になった宏海には見向きもしなかったが、今度は次兄の恭作が、すでに丸坊主だった宏海にかつらをかぶせ、フェラを強要した。恭作は「おれの嫁は希美と決めているんだが、あいつがやらせないから、うり二つのお前にこんなことさせるんだ。恨むなら母親を恨め」とまるで自分は被害者のようなことを言いながら宏海の口中に精を放った。今年の夏は、恭作の目から自分の胸を隠すのに必死だった。幸い、何かを察した父親が常に宏海のそばにいたため、今年は恭作の魔の手をのがれることができたのだ。
実は、宏海が今回、渇田少年の誘いに応じたのは、少年が大柄な上、老け顔で、どことなく芳作や恭作に似ているからだという。芳作や恭作に似た、肉体労働かスポーツマン上がりのおじさん、話を聞いていると、宏海の理想のタイプは、どうも父親と重なってくるのだが…。宏海の話が呼び起こした性的興奮やら嫉妬やらで欲望に火が付いた渇田少年は、また宏海の背後に回ると乳を揉み始めた。今度は落ち着いてブラを外せたので、思う存分、生乳の感触を楽しめた。ふと思いついて、「あ、そこは…」と抵抗する宏海の手をねじ上げて、下に手を伸ばすと、宏海のちんぽは先走り液でぬるぬるだった。自分がいつもオナニーをしている要領でしごきながら、片手を尻に回して肛門を愛撫すると、どんどん硬さと大きさを増して、やがて激しく射精した。
宏海はマゾ気質で、少々痛めつけると、快感が増すようだ。尻を平手打ちしてやると、ちんぽが硬くなり、うっとりした表情までする。宏海の尻を赤く染めて、渇田少年はもう宏海を征服した気分に酔っていた。
渇田少年に強いられた暴発で、下着とサロペットを汚した宏海は「見ないでよ」といいながら、リュックの中から着替えのミニスカワンピを取り出した。股下何センチなんだろう。すこしかがんだだけでパンティーが丸見えになりそうだが、ふわっとしたフレアなので、期待ほどパンチラはしない。ただ、風には極端に弱くて、ちょっと強いと簡単にめくれ上がる。ブラも薄く軽いものに取り換えたので、よくみるとワンピの上からでもぽちっとした乳首がわかる。「この服は、映画が終わってから、ゆっくり見せてあげようと思っていたのに」と宏海は拗ねてみせた。
宏海はそのまま渇田少年の前にひざまずくと、顔を下半身に近づけ、復活したちんぽをぱくっと咥えた。今回は渇田少年、宏海の乳房を服の上から揉む程度で、宏海の奉仕に全身をゆだねた。ここはもはや映画館ではなく、二人の愛の巣、天国としか思えなかった。
渇田少年、勢いで宏海のアヌスも狙ったが「そこはダメ」と拒絶された。しかし、粘りは渇田少年の身上だ。敏感な宏海の乳首を吸い、尻を叩いてやり、これまでの男遍歴と凌辱された経験を自白させた。あのときのイケメン、田沼との関係は、また嫉妬の炎を燃え上がらせたが、同時に寝取りに成功した満足感ももたらした。渇田少年は愛撫と言葉責めで、宏海の心身をトロトロにとろかせると、右手の中指を第二関節まで宏海の肛門に侵入させて、ピストンを楽しんだ。宏海の尻穴は輪ゴムのように渇田少年の指を締め上げて、ここにちんぽを突っ込んだら、どれほど気持ちいいだろうかと、男の征服本能をくすぐったが、恋愛経験が実質ゼロの渇田少年、「本当に好きな人が現れるときまで、そこの処女はとっておくの」という宏海の切なる願いを踏みにじる勇気はなく、最後はまた宏海に自分の精液をたっぷり飲ませることで満足した。
この六時間で宏海は都合四回、渇田少年は六回射精した。二人とも、もうちんぽはピクリともしない。
「お前、本当に童貞だったの?」。責められ続けてぐったりした宏海の疑問はもっともだ。渇田少年は、初めてとは思えないほど、責めがうまかった。
「お前のために動画と本で、いっぱい予習してきたからさ」。渇田少年は、なんでもないようにいう。だがこの言葉、性の面ではこれまで奉仕する一方だった宏海の胸にぐっとくるものがあった。一瞬、尻穴の処女を渇田少年に挙げてもいいかなと思ったほどだ。
「きょうのことは二人だけの秘密だよ」と宏海は、熱心に今撮ったばかりの動画を調べる渇田少年に懸念を覚えて釘を刺した。渇田少年としては、友人たちに(単なる錯覚なのだが)宏海を完全にわがものとした、自分のいうことはすべて受け入れる性奴隷に堕したんだと教えたくてたまらない。はっきりと宏海だとわからない程度に、顔や声を加工して、ちらっとだけ見せようかと未練がましく考えている。
しかし、田沼といい、SNSで見た宏海を血マナコで探している、自称アニメファン連中といい、若い男は宏海の巨乳、女としての宏海にしか興味はない。そんな連中、胸を切除したら、去っていくだろう。宏海と向き合って、互いの顔をみつめながら横たわっている渇田少年も、宏海が近く胸をペタンコに戻すと聞いて、その時が来てもこの恋は続くのか、自信はなかった。
そのとき、宏海が「次のデートのときには、学校のセーラー服を着ようかな」。「?」。宏海は古着屋で、学校の女子制服を、合いもの冬物合わせて十着ほど見つけたそうだ。すべてサイズ違いだし、業者が売れ残りを処分したのか。宏海は巨乳のせいで、上はL、スカートはMなので、全部まとめ買いしたという。「平日なら、制服で遊園地に行っても大丈夫だよね」。宏海はしばらく渇田少年と付き合う気になっているようだ。渇田少年にも、宏海の「本当に好きな人」になれるチャンスはまだ残っているようだ。
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