リラクゼーションサロンの恥罠41
アキラ「未知子!!」
「知子が泣いてるわよ!!」
未知子「ああ~!」
「ごめん!ごめん!」
「なに?、ま~たおしっこか~?」
彼女は海外で無事出産を終えて帰国していた。
妊娠中の博美と云い、此処名医紹介所はさながら保育所と化していた。
アキラ「全く!」
「少しは母親らしくしなさい!」
博美「出門さん、ちょっとは慣れた?」
未知子「い~や!」
「経験者は余裕があっていいね~」
彼女は初めての子育てに悪戦苦闘の毎日である。
ハラ「あの出門先生がお母さんだなんて・・」
「未だに僕には信じられません!」
堀之内「ってゆうか、何で貴方が此処に居るの?」
ハラ「あぁ~、もうっ!!何度同じ事を云わせるんですか~?!」
彼、ハラマモルは未知子の早期外科医復帰を東〇大病院から厳命されていた。
ハラ「先週にですね、心臓病の重篤患者が来院したんです~!」
アキラ「あら?」
「東〇大さんには優秀な心臓血管外科の先生がいらっしゃらないの?」
ハラ「それが失敗出来ないんです~!」
「超有名なアイドルグループのリーダーなので~!」
アキラ「あらまあ?」
「そうと分かったら、早速情報収集しなくっちゃ!!」
アキラ氏はサクサクとスーツに着替えて、いそいそと何処かへ出掛けて仕舞った。
堀之内「出門さん?」
「このカルテを見ると・・」
「う~ん、結構、厳しいよ!」
未知子「え~、どれどれ?」
「ん~、何?」
「あぁこれ!、この間アメリカでやったやつよりマシじゃん!」
ハラ「えっ?、ほっ、本当ですか!?」
未知子「うんっ!」
「私、失敗しないので!」
「てか、あんた、何て名前だっけ?」
ハラ「やった~!!」
「それじゃ、僕、用が有りますんで!」
「因みに、マモル!ハラマモル!!」
「よっしゃ~!!」
彼は見通しが明るい事が分かると、鼻歌まじりでとっとと紹介所を後にした。
堀之内「ってか出門さん、向こうでオペしてたの?」
彼女はびっくりしていた。
身重の状態で、そんな大変なオペに関わっていた等と。
やっぱり、未知子はスケールが違うと感心した。
未知子「そう!」
「知り合いに、どうしてもって頼まれちゃってさ~!(笑)」
堀之内「ど~せ、自分から首を突っ込んだんでしょ?」
未知子「ああ~!何で分かるの?」
博美は天井を見ながら、駄目だこりゃっと云ったポーズをした。
博美「ところで!」
「知子ちゃんの名の由来」
「聞いてなかったんだけど?」
未知子「ああ~!名前?」
「アキラさんに決めて貰った!」
博美「何で、知子なの?」
未知子「さあ?」
アキラ氏は未知子から娘の命名について尋ねられた時に、以前から考えていた事を、その名前に盛り込もうとした。
未知子の未知は未知数の未知。
未知数は数学上のX(エックス)に当たる。
彼女の娘にまで過酷な人生を歩ませたくは無い。
そして知的な女性に育って欲しい。
そんな彼の親心からであった。
堀之内「宏さんには相談したの?」
未知子「一応ね!」
「でも、何か違うからやめた」
堀之内「ええ~?、ひど~い!」
二人は顔を見合わせて、くすくすと笑った。
宏「へぇ~っくしょん!!」
「あれ?、花粉の季節でも無いのに・・」
彼は二人から噂をされてくしゃみをした。
客「先生?、大丈夫ですか?」
更に客にまで心配された。
宏「ああ、いえいえ、何でもありません!」
彼は只、背中に寒いモノが走った事だけは不思議であった。
彼は毎日を仕事の忙しさに追われている。
彼女達との出来事も、そんな日々を送るに連れて徐々に記憶から遠退いて行く。
ただ先日、博美からのメールでお腹の中の子が男の子であったと知らされて単純に嬉しかった事が記憶に新しかった。
そんな平凡な日々が続いた或る日、一人の少女が来訪した。
膝の治療の為に、この店に通っていた、あの恩田望結であった。
宏「おぉ!望結ちゃん、久し振り!!」
「その後、膝の具合はどうですか?」
望結「先生!!」
「お久しぶりです!」
「もう、すっかり異常無しです!」
彼女はJKの1年生になっていた。
ネイビーブルーのジャケットにミニスカートと短いソックス。
首には赤いリボンがアクセントとして映えている。
JKの制服が良く似合って、以前より格段に可愛くセクシーな雰囲気を醸し出している。
望結「あれから、ず~っと海外遠征が続いていたんです」
宏「競技と芸能活動や勉学で、物凄く大変なんだろうなあ~」
望結「そう云って頂けるのは先生だけです!」
彼女は、以前から社交辞令に長けていた。
だが、今の言葉は明らかに違う。
その言葉には彼への信頼が溢れていた。
望結「先生、私」
「向こう(海外)で知り合いになった女の子が居るんです」
「その子は足首に痛みを抱えています」
宏「はい、そうですか?」
「足首?」
「それはアスリートとして厳しいですねえ!」
「う~ん、一度ここへ連れて来てみては?」
「症状の確認だけでも判断は可能ですから!」
彼女の不安そうな表情が一変した。
望結「分かりました!!」
「今度、連れてきますね!」
「よろしくお願いします!!」
彼は思った。
人生に於いて、彼女なりのベストな選択をして欲しいと。
その為であれば、どの様な手助けも厭わないと。
彼は彼女が見えなくなるまで見送っていた。
未知子と博美は今日も難病に立ち向かって行く。
彼も自分の技術で一人でも多くの人の痛みを和らげてあげたいと思っていた。
了
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