リラクゼーションサロンの恥罠29
博美「それでは以上の通り、こちらに示した段取りでお願いします」
研修医「はい!よろしくお願いいたします」
ここ〇帝大学病院では、フリーランスの麻酔科医である博美に麻酔科の研修医指導を任せる事もある。
彼女は疑問を持ちながらも、黙々と与えられた仕事をこなして行く。
研修医「堀之内先生!」
博美「えっ?何?」
研修医は若い女性で博美に憧れていた。
研修医「先生、最近、髪型変えられましたよね!」
博美「なっ、何で分かるの?」
研修医「一目瞭然です!」
「あと、メークの処理や服装も変わった様な・・」
博美「そっ、そうかな?」
彼女は余り意識をしていなかったが、周りの対応が変わって来た。
数日前には消化器外科の独身イケメン医師から、食事の誘いまで受けていた。
事実として彼女は魅力的な印象を周囲に与える様になっていた。
元々が女優の内〇有紀そっくりの美貌の持ち主である。
それに明るい表情と社交性が加われば、バツイチとは云え周りの男共が放っては置かない。
彼女は、そんな毎日を過ごしていたが、根本的な問題解決には至っていない。
あの日、未知子と共に宏と会った時から、何の進展も無いままなのである。
勇気を出して彼に会いに行く事迄は出来た。
だが、あと一歩が踏み出せない。
彼女は焦っていた。
こんな事で悩む事など絶対に無い未知子の性格が本当に羨ましかった。
アキラ「博美!」
「あんた、あれだけ大騒ぎしておいて」
「どうなってんの?、その後!」
昨夜はアキラ氏にも発破を掛けられた。
そして追い詰められた彼女は、やっと発奮して決意した。
彼女は彼を夕食に誘う算段を始めた。
博美「どうしよう?」
「何が良いのかな?」
「宏さんの好みが分からないよ~!」
「和食?、それともイタリアン?フレンチ?」
そんな堂々巡りをしていると彼からメールが届いた。
宏(クラシックコンサートのチケットが手に入りました)
(素晴らしいヴァイオリニストが出演をするそうです!)
(もし、よろしかったら御一緒にどうですか?)
正に物語の様な渡りに船であった。
彼女は即答する。
博美(是非!お願いします)
(楽しみにしています)
彼女は彼にメールを送る。
そして今迄の苦労を思い返して苦笑した。
彼女の肩から、やっと力が抜けた。
数日後の夕方。
彼女の自宅から最寄りの駅前で彼と待ち合わせをする。
ファッションは地味めの黒を基調とした、ミニのドレス姿である。
彼は待ち合わせ時刻ピッタリのタイミングで現れた。
宏「お待たせしました!」
「さあ、行きましょうか」
博美「はい!」
彼の車に乗って現地へと赴く。
宏「実は僕、クラシックは初めてなんですよ!」
「堀之内さんは?」
博美「私は、何回かは・・」
宏「そうですか」
「じゃあ、色々教えて下さいね!」
誘っておいて、教えてくれとは!。
彼女は彼に、益々興味を持った。
面白い人だと思った。
コンサート会場では、彼は真剣であった。
真っ直ぐに前を向いてバイオリンの音色に聴き入っている。
余り無駄口を叩く場所ではないが、笑顔で視線を交わす余裕すら無い。
彼女の耳には音楽など入って来る筈も無い。
彼女は、せめて彼と手を繋ぎたかったが、それも果たせなかった。
彼女のテンションは、次第に下がり気味となる。
彼は時折、彼女の表情をチェックしていたが、浮かない彼女に困惑した。
コンサートが終わって会場を後にする。
彼は思い切って彼女に聞いた。
宏「あの、博美さん?」
「余り、趣味に合いませんか?、クラシックは・・」
博美「あっ、いえ、そんな事無い!」
「楽しかったです!」
宏「そうですか・・」
二人の間に気まずい雰囲気が漂う。
宏「じゃあ、この後、何か旨いものでも食べに行きましょう!」
博美「はい!」
「お願いします!」
彼の明るさに彼女は救われた。
二人は車での移動中に、海外へ行ってしまった未知子の話題で盛り上がった。
宏「そういえば未知子さん、どうしてるのかなあ?」
博美「彼女は何処ででも生きて行けますから!」
宏「ははっ!(笑)」
「なるほど!」
博美「私は彼女が羨ましいです」
宏「えっ?どうして?」
博美「何でもかんでも、取り敢えず物事をハッキリと主張出来る」
「私には無理かな?」
宏「あ、でも堀之内さんにも良いところが有りますよ!」
博美「例えば?、どんな?」
宏「え~と、そうそう!」
「優秀な麻酔科医ですから!」
博美(そんなの当たり前じゃん!)
「後は?」
宏「え~と、う~ん」
博美(もう、無いんかい!)
宏「そうそう!」
博美「なになに!?」
宏「内〇有紀そっくり!!」
博美(まっ、まあね!嬉)
「それだけですか?」
宏「それだけ?、あっ、いや・・・」
博美「無いの?」
宏「え~と、あ~、その」
博美「無いんだ!!」
宏「有ります!!」
博美「えっ?なにかな?」
(ワクワク!!)
宏「あ、やっぱりやめとこうかな、これ・・」
博美「え~、なに~、気になる~!」
宏「やっぱ、やめます!(汗)」
博美「ちょっと~、・・あっ!、ひょっとして」
「今、エッチな事、考えてました?」
宏「ええっ?、いえいえ、そんな!!」
博美「そ~だ!、間違い無い!」
「私の事、エッチな目で見てたんだ!」
宏「ごっ、ご、誤解です!!」
博美「いやらしい~!!」
宏「待って!誤解ですって!!」
博美「いいよ・・宏さんなら・・」
宏「はい?」
博美「貴方ならいいって言ってるの!」
彼女は未知子からの影のアシストで、上手く波に乗れたと確信した。
宏「博美さん・・・」
博美「どうするの?」
宏「どうする?」
博美「するの?しないの?」
宏「僕は・・・」
博美「今・・ここで決めて!」
宏「今?・・・それは・・したいです・・・」
博美「誰と?」
宏「・・博美、さんと・・・」
彼女はまんまと彼に、その一言を言わせる事が出来た。
博美「あの、一つ、条件を付けてもいい?」
宏「・・条件・・ですか?」
博美「私ね、男の子が欲しいの!!」
彼は夢の中で彷徨っている様な気がした。
彼女の豹変ぶりに、目が回りそうな勢いであった。
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