リラクゼーションサロンの恥罠24
妊娠検査薬で陽性反応が出た未知子は、それから半月後にわざわざ街の産婦人科へかかった。
何故なら彼女が普段、仕事として通っている〇帝大学病院での検査など、到底受け入れられないからだ。
自らの秘め事を、医局の彼らに知られる訳にはいかない。
今居る立ち位置を崩す事は出来無いのである。
勿論彼女が自分自身を検査する事も出来ない。
彼女は黙って専門医の判断に身を任せる事しか選択肢が無かった。
そして各種の検査が行われた後、待合室で待っていると名前が呼ばれた。
「出門さん、どうぞ~」
担当の医師は女医であった。
未知子は、おどおどとした自信無さげな態度で診察室に入る。
すると医師の口から結果が伝えられる。
「おめでたですね!」
「お身体、大事になさってください」
彼女は晴れて妊婦となった。
その事実が今更ながら嬉しかった。
彼女は嬉々として宏に電話をする。
未知子「宏さん!聞いて聞いて!」
「あのね~」
「私、妊娠したよ!」
宏「ええっ?」
「・・・・・」
「本当、ですか?・・・」
彼の気持ちは複雑であった。
彼女に赤ちゃんが出来たという事は、はっきり云って彼は既に用済みなのである。
未知子「どうしたの?」
「宏さん?」
宏「あっ!あぁ、 おめでとう!」
未知子「ええ!ありがとう!」
彼女は彼の浮かない声が気になった。
だが、もう全ては始まってしまった。
彼女は彼に向かって伝えた。
未知子「今度、挨拶にいくね!」
「また、連絡するから」
彼は瞬時に気を取り直した。
こんな結末になる事は最初から分かっていた事である。
彼は努めて明るく振舞って彼女に云う。
宏「ええ!」
「是非とも待ってます!」
未知子「じゃあね~、また!」
彼女からの電話は切れた。
今日から彼の心は、また一人きりとなった。
それから数日後、彼の整体院に一人の女性が現れた。
彼女は待合室で、しきりに周囲を伺っている。
宏「お待たせ致しました。どうぞ~!」
彼の言葉を聞いて彼女は慎重な様子で施術室へと向かう。
彼女は既にマッサージ用の下着に着替えている。
彼に促され、彼女はバスタオルを外してベッドの上にうつ伏せに寝る。
宏「ようこそ当院へ!」
「え~、堀之内、さんですね!」
「どうぞ、リラックスして下さい」
堀之内「あっ、はい」
「よろしくお願いします」
宏「え~と、肩?」
「肩のこりが酷いのですか?」
堀之内「ええ!」
「特に長時間の連続勤務の後が辛いです」
宏「そうですか」
「肩こりは様々な原因が考えられます」
「では、一つずつチェックしていきましょう!」
彼女は未知子に黙って偵察に来た。
彼女の事が心配であったからだ。
酷い男であるならば、彼女への中絶を勧める覚悟である。
堀之内は鋭い視線で彼の一挙手一投足を見定めていく。
と云う予定ではあったが、彼女は余りの気持ち良さに本当に寝てしまった。
正に彼の成すがままの状態である。
そして暫くして、彼の方から眠りを覚まされてしまう。
彼女は、ハッとした。
身体の全てを彼に投げ出してしまっている自分自身に。
宏「では、正座をして下さい」
彼に促されるままに、ベッドの上で正座をする。
彼女は薄目を開けて彼を観察している。
宏「身体のバランスを診てみますね!」
彼は彼女の身体をキチンと正立させて行く。
彼女は、この時点で既に身体の爽快さと肩の軽さを覚えていた。
堀之内「先生」
「随分と楽になりました!」
「気分も良いです!」
宏「そうですか!」
「それは良かった!」
堀之内「あの、肩こり・・」
「治りそうですか?」
宏「今日は、その為の第一歩です」
「気長に、ゆったりとした気持ちを持つ事ですね!」
「少しづつ改善して行きましょう」
肩が軽くなり、彼女は彼の腕を見極める事が出来た。
彼は本物である様だ。
しかも、彼女好みのルックスであった。
彼女は面食いである。
彼女は未知子に軽く嫉妬した。
堀之内「先生!」
宏「はっ?何ですか?」
堀之内「これからもよろしくお願いします」
宏「はい!」
「こちらこそよろしくお願い致します」
未知子の為に偵察に来た堀之内ではあったが、逆に彼女自身の意識が変わってしまった。
要するに、ミイラ取りがミイラに成ってしまったのである。
彼女はこの短い間に、彼女本人でさえ解からない心の奥底で決意をしてしまった。
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