第1章 10年後②
玲子はその手紙を読みながら、涙がにじんできた。子どもたちと楽しく過ごした日々が蘇ってきた。玲子は思い切ってCDを見ることにした。見れば、きっと退職前の半年間の忌まわしいい出来事を思い出してしまうことはわかっていた。それでも、勇気をもってCDを自分のノートパソコンにセットした。
そこには25歳になった卒業生が同窓会を楽しんでいる画像が写っていた。生徒会長だった岡部君、野球部の菊池君、体育祭で女性団長だった相場さん、大人になった懐かしい顔、中には誰だろうと思い出せない顔もあった。
(あっ!)
玲子は会場全体を写した1枚の画像を見て、思わず目を背けた。そこには、あの忌まわしいレイプ事件の張本人といってもいい新田薫が写っていた。
(やっぱり、来ていたんだ・・・)
一時期の荒れていた頃とは違い、髪の毛も黒く、今どきの若い子たちがする普通のファッションだった。
玲子はファイルの最後にクラス別の名簿ファイルが保存されているのをみつけた。そこには卒業生38人の名前と住所、そして担任だった玲子の小樽の実家の住所も記載されていた。新田薫は、隣町の千代田町に住んでいるようだった。気にはなったが、玲子にはどうでもいいことだった。これ以上CDを見る気にはなれず、書棚に立てかけてしまった。嫌な胸騒ぎもあったが、CDのことは早く忘れて日常に戻ろうと思った。
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