私が襲われたことを誰かに知られていたら。
新学期が始まり、恐る恐る登校した私ではあったが、例の事件に触れるものは誰も居らず、数日もしないうちに私の杞憂に過ぎないことが判明する。
私は以前の生活を取り戻しつつあった。
相変わらず自慰に耽り、後一歩というところでもどかしい想いに歯噛みをしてはいたけれど。
事態に進展があったのは、九月も半ばになろうかという頃である。
下校の為、校門を出た私が友人達と別れた後のことだ。
「・・・さん、ですか?」
おずおずと私の名を呼んだ同じ歳頃の少女は、他校の制服を身に付け、やましそうな表情を浮かべている。
「・・・そう・・ですけど・・?」
見知らぬ少女は、押し付けるように何かを私に手渡すと、長居は無用とばかりに走り去っていった。
手の中に残されたもの、1センチ程の厚さがあるA4サイズの封筒が、何故か奇妙なまでに重く感じられたのは、何かの暗示だったのだろうか。
歩きながら封を切ると、中身が何十枚かのコピー用紙であることが見て取れた。
そのうちの一枚を引っ張り出し、眼にした瞬間、足が止まる。
私の顔は強張り、血の気が引く。
コピー用紙にプリントされた薄暗い画像、その中心に写された、あられもない姿としか表現出来ない半裸の少女。
その場に立ち尽くした私は、呼吸すら忘れてしまったかのように画像に見入った。
光量の少ない、だが充分な画素数で撮影された少女は、他ならぬ私である。
コピー用紙を封筒に戻した私は、ややフラつきながらも家路を辿る。
三歩、五歩、十歩と進むうちに、私の足は徐々に速度を上げていった。
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