一般的なプリクラは撮影完了後、自動的に画像データが消去される。
ヤヨイも当然、そう思っていた。
だが何事にも例外はある。
しかも、ゲームセンターの管理スタッフや店員であれば尚更だ。
そういう意味において、ヤヨイの迂闊さを責めるのは酷な話かもしれない。
運が悪かった、いや悪過ぎたのだ。
「ね、キミキミ、これ見てもらっていいかな?」
大学生と思しき二人組の男に声を掛けられたヤヨイは、訝しむような表情を浮かべて立ち止まる。
施設内を彷徨いながら、昂ぶった躯をクライマックスに向かわせるべく、適当な場所を探していた折のことであった。
な?
あぁそうだな、そっくりだ。
声を潜め、コソコソと囁き合う二人組を警戒するヤヨイに対し、片割れの男が一枚の紙片を差し出した。
「ぁ。」
小さく叫んだヤヨイの眼は、差し出された紙片に釘付けになった。
差し出された紙片は、先刻、ポケットに突っ込んだプリクラに他ならない。
そんな筈はない。
まさか落としてしまった?
思わずポケットの中を探るが、当然のことながら先刻のプリクラが指先に触れる。
だとしたら何故?
愕然としながら、それでもその場に辛うじて立ち尽くすヤヨイ。
勝ち誇ったような表情を浮かべ、口々に揶揄し始める二人組。
エロい格好してるねぇ。
いつもこんなことしてるの?
そのコートの下、今も裸なの?
この時点でヤヨイの心は折れてしまう。
あの時と同じだ。
四年前、全裸で道端に放り出されたあの時と同じだった。
いや、違う。
四年前、ヤヨイは被害者であった。
少なくとも、道端で全裸を晒す羽目になったところまでは、確実に被害者だったのだ。
自業自得だ。
今のヤヨイは、自分のツケを自分で支払うしかない。
男の一人がヤヨイの肩に手を掛けた。
糸の切れた操り人形のように、無言のヤヨイは促されるままに足を運ぶ。
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