勿論、私の名前は『サツキ』ではない。
五月生まれだからサツキ、それだけだ。
だが、だからこそ私を『サツキ』と呼ぶのは、いや、呼ぶ資格があるのは唯一人、ヤヨイだけだ。
まずはヤヨイは実名を名乗り、私の家を知っている理由を明かす。
隙を盗み、例の男のパソコンに侵入し、私の個人情報を調べ、かつ出鱈目の内容に更新してきたという。
更に驚くことに、私が握られている弱味というべき、男達に辱しめられ、蹂躙された際に撮影された画像データも消去済みだと言うのだ。
『だから、もうサツキは自由なんだよ。』
手紙は続く。
ヤヨイにとって私は性的なパートナーであると同時に、悲惨な経験を共有できる唯一の友人であり姉妹と呼ぶべき、かけがえのない存在であった。
そんな奇跡のような出会いをもたらしたのが、憎んでも憎みきれない例の男と薬物であることは、皮肉以外の何物でもない。
一緒だよ、あたしもヤヨイのこと・・・
『仕事』の延長上に端を発した私的な交際はさておき、私を性的なパートナーとして、特に露出行為に引き摺り込んだことを謝罪するヤヨイ。
言えた義理ではないが、と断った上で単独での露出行為の危険性を説く。
『今回、それで大失敗しちゃった。』
大失敗・・?
嫌な予感は、いや増すばかりだ。
私には内緒であったが、ヤヨイは単独での露出行為を嗜むことがあったらしい。
危険性を理解していても、我慢しきれず行為に及んでしまうことを恥じていたのだという。
私を責めるつもりは毛頭無い、と断った上で事の顛末が綴られていく。
もう読みたくない、この先を読むのが怖い・・。
だが、読まねばならない。
一刻も早く読み終え、次の行動に移らねばならない可能性が高いと感じていた。
金曜日の夜、私からインフルエンザ罹患の報を受けたヤヨイは、致し方ない事と思いながらも、身の裡から溢れ出すような想いに耐えられなくなっていく。
期待していた予定が、肩透かしをくったことによる落胆も影響したのであろうか、基本的には禁忌としていた行動をとってしまったのは、土曜日の昼過ぎであった。
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