その間にも若い女店員が色々と明美たちの為に商品を持ってきたりしていたが、茜はその店員が愛らしい顔をしているのを知り、この人も兄の僕が好みそうだと思い、標的が急に増えて困ったようだ。明美は洋風のややきつめの美貌で、スリムなのに胸は結構ふくよかな上に黒髪を背まで長く伸ばしているお嬢様らしい外見なのでやはりハーレム向きだし、他の三人の友人も結構垢抜けていていい体をしている。まさか自分一人で一度にここの五人を連れていく訳には行かず、今日は明美だけでも僕の為に頑張ろうとしていた時、中学時代のバレーボールのコーチだった結城利紗子が、「あら江藤さん」と偶然にも店内で声を掛けてきた。「先生・・・」「今日はお友達皆とお買い物?」「いえ、そういう訳じゃ・・・・・」利紗子は身長が170センチを越えていていかにもスポーツ女性らしい精悍な外見で、明美たちもこの人にはかないそうもない。茜はここで思いきり、「この人たちは同じクラスの仲間なんです」と利紗子に紹介した。それまで威勢の良かった明美も、利紗子という大柄で活発な年上女性に対してどこか憧れめいた気持ちになり、自然に頭を下げた。「せっかく会ったんだから、この後どこかでお茶しない?」利紗子に勧められ、茜も明美も、「はい」と嬉しそうに返事をした。 明美が大き目の手提げ紙袋を三つ店員から受け取ってその店を出ると、すぐに友人三人が代わりにバッグを持ち、明美はピンク色の可愛いショルダーバッグだけの身軽な恰好になって颯爽と歩いた。それを見て利紗子は、「あなた、お金持ちのお嬢様?」と皮肉っぽく明美に尋ねた。「すごいお金持ちなんです!家は豪邸で!」友人の一人がちょっと自慢そうに鼻息荒く答えると、利紗子は冷ややかに、「そう」とだけ言った。「でも、若い時からそんな贅沢をしていたら後が大変ね」「どうしてですか?」明美が聞く。「お金が全てになるし、もし無くなったら耐えられなくなるから」「私は大丈夫」「ふふ、結構な自信ね」利紗子は明美の性格を見抜いて軽蔑している様子だったが、お金については他の友人も茜も似た考えなのでやや説教された気分になった。 それでも他の話題に移って彼女たちは和気あいあいとなり、やがて一軒の喫茶店に入っていった。六人なので一つのテーブルには茜と明美が利紗子と向かい合い、隣のテーブルに明美の友人、言わば彼女のご機嫌取り三人が着いた。ウエイトレスが注文を聞きに来て、各自がそれぞれコーヒーやクリームソーダ、ショートケーキなどを注文する。茜はすぐ左隣に明美が居るので何となく居心地が悪かったが、目の前には、憧れでもあった利紗子が居るので彼女とばかり話しをした。利紗子は昔の思い出や最近の日常などについて屈託無く喋り、時には気を使って明美にも笑顔で話し掛けたりもした。「先生はいくつになったんですか?」「もう三十二」「好きな人はいるんですか」「残念ながら一人も。このまま歳を取っちゃうのかしら」「先生なら大丈夫ですよ。必ず幸せな結婚が出来ます」「ありがとう」「実は、一人素敵な男性がいるんですけど・・・・」そう言われて利紗子は茜を見た。「年は二十九でちょっと下なんだけど、とっても素敵なんです」「その方、どんなお仕事をしてらっしゃるの?」「銀行員なんです」「まあ・・」茜の話は明美にも関心があるらしく、彼女はおとなしく聞き耳を立てている。「家は資産家らしいけど、その人、親には甘えたくないと言って自活してるんですよ」「ふうん」利紗子は感心しているようだ。 そこへ注文の品々がテーブルに置かれ、利紗子はブラックのままコーヒーを飲み始めた。茜は第一目的の明美について何か計画を立てないと、と幾分焦りながらも、つい利紗子に嘘を言いまくってしまっていた。利紗子みたいな男勝りのスポーツウーマンを兄の僕に捧げられたら・・・こんな勝気な女が全裸にされて泣くところを見てみたい・・・そんなサドじみた思いにとらわれていたのだった。勿論それは明美や取り巻き三人にも言える事で、この際全員を、いやあの可愛い店員もまとめて連れて行こうか・・・という大きな気持ちにまでなっていった。
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