(6)
両手首の戒めだけを解いてあげ、俺と先輩は裏口から外に出た。途中で目出し帽と手袋を外し、それをポケットに入れ、タクシーを拾った。
二十分後……。タクシーを降りて駆け込んだのは、会社の近くにある弁当屋。
「おばちゃん。唐揚げ弁当、四つ」
「それと、ナメコ汁も」
先輩に続いて、俺もおばちゃんにお願いした。
「はいよ。ちょっと待ってね」
そう返したおばちゃんが、弁当を詰めながら笑って訊いてくる。
「残業中の買い出し、ご苦労様。今回は、どっちがミスしたの?」
「こいつ」
間髪を入れず、先輩が俺を指差した。
「そういうミスは、大歓迎だよ。ウチのお弁当、それだけ売れるから」
「おばちゃん。冗談きついよ」
泣きそうな顔で返した俺だが、おばちゃんは笑うだけ。昼飯は社員食堂だが、残業での腹拵えはこの弁当屋を利用している。
「はい。お待たせ。火傷しないように……ね」
「有難う。おばちゃん」
弁当とナメコ汁を受け取り、会社に戻った。
「ただいま、戻りました。遅くなりまして」
仕事場に戻ると、主任と先輩Bがふたりを出迎えてくれた。
「ご免なさいね。忘れ物を取りに行って貰ったばかりか、お弁当まで買ってきて貰って」
他に残業をしている社員が、何人か居る。その社員たちに聞こえるような声で、主任は俺たちに礼を言った。俺も、笑顔で主任に返す。
「いいですよ。ついで……です。ついで」
弁当とナメコ汁を配り、俺もデスクに向かう。主任が、三人に言う。
「さあ。お弁当を食べて、もうひと頑張りよ」
俺は、主任にデジカメを手渡した。韓国女の無様な姿を画像で確認した主任が、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「良く撮れているじゃない。有難う」
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