(29)
「どうしたの? 矢を投げないの? 準備は、整っているのよ」
動けなくなった草食動物を弄ぶ肉食獣のように、主任が俺を追い詰める。矢の的は、三〇センチくらい前で逆さ吊りにしてある汚い韓国女。例えるなら、ゴールキーパーの居ないPKだ。下手に外したら、絶対に何か言われる……というか、もう言われている。
何か……、逃げる方法は無いか? 普段はあまり使わない思考回路を、フル稼働させて考える俺。そうだ! この手があった!
「な……、投げます!」
そう叫んで、矢を投げる俺だが……。
「うわっ! 目に、ゴミが入った」
そう言って、空いている手で目を覆い、明後日の方向に矢を投げた。しかし……。
「おめでとう! 大当たりよ」
えっ! 主任のその声、慌てて視界を戻した俺。逆さ吊りにしてある汚い韓国女の腹に、一本の矢が刺さっている。しかし……。俺が持っていた矢とは、色が違う。そうか。分かったぞ! 俺が目を閉じた隙に、主任が突き刺したんだ。
「これ、俺が投げた矢じゃありません!」
俺のそんな主張を、主任は笑顔で突っ撥ねる。
「いいえ。これが、あなたの投げた矢よ。みんな、見ていたもの。ねぇ! みんな!」
そ……、そんな。ガックリと落とした俺の肩に手を置き、先輩Aが宥めるように言う。
「諦めろ。主任のほうが、一枚上手だ……ということだ」
主任たちが支度をする中……。俺は、そっと後退りをする。
「こらっ! 何処へ行くの?」
あっ! 見付かってしまった! 主任の叱咤に、ビクッと足を止めた俺。
「ちょ……、ちょっとトイレに」
「裸のまま、フリチンでトイレに行くの?」
俺の言い訳に、クスクス笑って返した主任。ロアンが、続けて俺に言う。
「トイレなら、ここにあるわよ。韓国製のトイレが……ね」
全裸で縛ってある汚い韓国女を下ろした中東男と東南アジア男が、その汚い韓国女を俺の前に正座させた。
この汚い韓国女が、トイレ? 便所……だろ? 韓国女のような汚い汚物入れは、便所……と言う。トイレ……とは言わない。“お”も、付けてはいけない。
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