(22)
翌日……。いつものように、デスクに向かって仕事をしている俺。もうすぐ昼休みだ。社員食堂、今日の日替わりランチは何かな? そんなことを考えていたとき、内線電話が鳴った。主任が、いち早く手を伸ばして受話器を取る。
「はい。庶務課です。はい。私です。はい。分かりました」
そんな会話をして、受話器を置いた主任。同時に、昼休みの時間になった。
「さあ。お昼だ」
「何を食べようかな?」
そんなことを言いながら、席を立つふたりの先輩。俺も、遅れて席を立ったが……。
「ご免なさい。私、彼と外で食べるから」
主任が俺の肩に手を置いて、ふたりの先輩にそう言った。えっ?
「分かりました」
キョトンとする俺を残し、ふたりの先輩は社員食堂に向かう。
「さあ。行くわよ」
「は……、はあ」
個人的に注意されるようなミス、したのかな? 不安になりながら、俺はあとに続く。やって来たのは、会社の前にある来客用の駐車場。
「主任。ここ、駐車場ですよ。来客用の……」
「いいから、いいから」
その中にある一台の車の脇に、俺は立たされた。
「はぁい。こんにちは」
運転席のウインドウを下げて、俺を見上げた女。その女を見た俺は、びっくり。俺をラブホテルに引っ張り込んだ、ベトナム女である。反射的に逃げ出そうとした俺の襟首を、主任はしっかりと掴む。否応なしに、後部座席に引っ張り込まれてしまった。
「はい。お昼よ」
ベトナム女が、主任と俺にハンバーガー屋の紙袋を差し出した。
「有難う」
笑顔でお礼を言った主任が、ひとつを俺に持たせる。
「食べなさい」
主任に言われて、仕方なく中に入っているハンバーガーを取り出してパクつく。
「主任。誰なんですか? この人……」
愚痴るような俺の問いに、ベトナム女が割り込む。
「その前に、これを渡しておくわね。昨日の報酬……。受け取らないで、帰っちゃうんだから」
ベトナム女が手を伸ばして、俺の背広のポケットに茶封筒を捩じ込んだ。中身は、十万円の小切手。何なんだ? 一体……。キョトンとする俺に、主任が女の紹介をする。
「紹介するわね。あなたのパートナーとなる、ロアンよ」
パートナー……と聞いて、俺は口に含んだコーヒーをブハッと噴き出してしまった。
※元投稿はこちら >>