(12)
急にマユちゃんに逢いたくなり、お店のホームページを覗くと本日出勤になっている。でも……。マユちゃん、人気嬢だからなぁ。ダメ元で、トイレの個室から携帯電話で問い合わせてみた。
「大丈夫ですよ。派遣出来ますよ」
嘘だろう? 当日に予約出来た。とにかく、時計と睨めっ子をしながら仕事を続け、定時の退社でホテルに直行。部屋から電話を入れて、マユちゃんを待つ。
待つこと十分。マユちゃんが、やって来た。
「どうしたの? 急に……。いつものパターンだと、もう少し先でしょ?」
嬉しそうな笑顔で訊いてきたマユちゃん。不埒な韓国人を懲らしめた報酬で、少し潤っているからな。
「ちょっと……ね。でも、良かった。今日、いきなりだから。まさか、予約出来るとは思わなかったよ。マユちゃん、人気者だから」
「大丈夫だよ。大丈夫……。マユの方こそ、もう逢えないかも……と思って、心配だった」
ん? マユちゃんの顔は笑顔だが、声はいつもより沈んでいる。
「どうしたの? 何か、あったの?」
「ううん。大丈夫」
無理に笑顔を作って返したマユちゃんだが、目は涙で潤んでいる。
「良かったら、話してくれよ。相談には乗れないけど、少しでも気分が楽になれば」
コクッと頷いたマユちゃんが、事情を説明してくれた。
「えっ! 韓デリ?」
俺の言葉に、マユちゃんはコクッと頷いた。最近近くに出来た韓国デリヘルに、客を殆ど盗られてしまったのだ。
真っ当なやり方で客を盗るなら分かるが、デリヘルのご法度のオンパレード。おまけに……。周りの風俗店の悪口を言い触らすばかりか、デリヘル嬢にも嫌がらせをしてくる。
日本のデリヘル嬢を、韓国のデリヘル嬢が集団で待ち伏せして。
「客を取れない身体にしてやる」
そう罵って、顔や身体に刃物で傷を付けるのである。それが怖くて、殆どの女の子が辞めていった。好みの女の子が居なければ、男も頼む気にならない。出勤しても、ボウズで帰る女の子も居るそうだ。
絶対に……、許せねえ! マユちゃんから笑顔を奪ったヤツは、俺が懲らしめてやる!
こんなんじゃ、オッパイや口で抜いて貰う気分にもならない。手で抜いて貰って、あとは他愛もない世間話で過ごした。これが、本当の手抜き……だな。
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