私は、数か月前の忌まわしい出来事を書くことで、ある意味「解毒」出来るのではないか、と思っていました。少しでも普通の精神に、体に戻れるのではないかと・・・。そして、私のこの気持ちを理解し、ネット上であっても、精神的に助けてくれる人が現れるのではないかと・・・。
しかし、実際に書き始めると、過去を思い出すことで体が震え、憎しみと恐怖に支配され、とても書き続けられるものではありませんでした。そして、データも削除をしました。
でも反対に、夢の中や、就寝前の自慰での想像が、より現実的に思い起されるようになりました。そして、それは私の精神を蝕んでいく麻薬のようにも思えました。悪いことなのに、自分の辛さを解放してくれるもの・・・。
そして、何度も書いては消した話を、とうとう、ここのHPにアップしました。
その日から、メールを何通か受信し、またレスへの書き込みが始まりました。その内容は、私への誹謗中傷、いやらしい女だという言葉、そして・・・、私の経験を読んで興奮している男性がいる、ということを改めて知りました。
(私のことを、同じようにしたいなんて・・・)
そう考えるだけで、私の体の芯は、熱くなってしまっていました。
(私が受けた辱めを書き綴っていくと、この人たちはどうするのだろう・・・、私はこの人たちにどうされるのだろう・・・)
何通も受信したメールの中には、いくつか気になる方がいました。
特に数名の方に、私は返信を送ってしまっていました。その方達は、私のことをどのように辱めたいか、具体的に書いて来られていました。そして、共通するのは、私のことをある意味、理解してくれているのではないか、と思ったことでした。
また、その方達からは、写真を載せて欲しい、と言われ続けました。顔にモザイクをかければ良い、適当に写真をカットすれば良い、裸でなくても良い・・・。
私は、パソコンにあまり強くなかったので、すぐにはその要求には答えられませんでしたが、ある方の指示で、目線を隠し、背景を隠すことをすることで、写真をアップしました。自分としては、他人から私を特定されることはない、と考えた上でのことでした。
写真を載せると、その方達含めて、私を褒めて頂くメールが届くようになりました。また、「顔を見せて欲しい」とか、「顔を隠して裸を見せて欲しい」というようなメールもありました。
そして、更に私を凌辱することを書いたメールも届くようになりました。
(私は、見知らぬ人に見られて、その人たちに犯されていく・・・)
今までの人生で味わったことのない恐怖、高揚感に苛まれ、その中でも自慰をする日が、次第に増えていました。
そして数か月に渡り、私が経験したことをこのHPにアップし続けていくことになりました。
私が経験を書き続けている間も、毎日のようにメールは届いていました。一番恐怖を覚えたのは、「私のことを見つけた」という内容でした。しかし、書かれている地名が私の普段訪れることのない場所ということもあり、何度も安堵するのでした。
そのことから、
(いくら何でも、あの写真から似た人を見かけることはあったとしても、私個人を特定することはない)
と、反対に自分の中に安心感を持つようになりました。
そうしている間にも、私は仕事を探し続け秋も深まるころ、やっとのことで自分の希望する職場を見つけ、面接を受けることになりました。
その日は、久しぶりにスーツに袖を通し出掛けることとなりました。
面接は午後の時間を指定されていたので、部屋で軽く昼食を取り、面接に向けて着替えをしました。
濃紺の上下のスーツ、白いシャツ、そして肌色のパンストを着け・・・。久々の軽い緊張感を味わい、秋晴れの爽やかな午後の空気の中、駅までの道を歩きました。
電車に乗り、面接先の会社に到着したのは、約束の3時半の15分ほど前でした。
受付を済ませ、面接会場に案内をされました。まだ少し時間が早いこともあり、会議室前の廊下に置かれた椅子で待つように指示をされました。
暫く待つと、私の前の時間の女性が会議室から出てきました。私よりは若く、礼儀正しく小奇麗な方でした。
軽く会釈をし私の前を通り過ぎるその方を見送り、暫くすると部屋の中から声がかかりました。扉をノックし、静かにドアを開けました。
そこには2つの長机が置かれ・・・。その机を見た瞬間、私はあの忌まわしいことをフラッシュバックのように思い出しました。
課長に呼び出されて、入った会議室。そして、そこで受けた屈辱・・・。
体も思考も、固く緊張し・・・、面接されている間も、その長机の上に転がされた自分の姿を思い出し・・・、両脚の力が抜けて膝が開きそうになるのを堪えるのに必死の十数分でした。面接官の方にも、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、と言われるほど、体に力が入っていました。話すときにも、気をつけないと声が上ずってしまいそうで・・・。
何とか面接を終え、会社の外に出た時には、あの時の恐怖で体が震えてきました。
(私は、もう会社で働くことは出来ないのだろうか・・・)
そんな絶望感も、心の中に暗い影を落としてきました。
私はそのまま部屋まで帰る気力もなく、駅までにあるカフェで暫くぼんやりとコーヒーを飲み、心を落ち着かせました。
(なんとかなる・・・)
そう思え始めた時は、周りは薄暗くなり始めていました。
冷たくなったコーヒーを飲み干し、駅に向かうとターミナルは大勢の退勤客で、ホームには長い列が出来ていました。
(この路線もこんなに混むんだ)
部屋を変わって、初めてのラッシュ。
電車のダイヤもあまりわからないまま、私は特急の列に並びました。
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