半時間ほどに、父親の帰宅の時間が迫っていた。
男は四人を嬲り抜いた道具をせっせと、バックに詰め込んでいる。
「さあ、そろそろ、失礼するかな。家族団欒の夕食の時間
だしな‥‥‥カレーかな今日は‥‥‥ハウス~♪」
人気アイドルグループの一人が出演する、カレーのCMの口調を真似て、男は爆笑していた。
続けざまに放たれる、タチの悪い冗談にも四人の反応はない。
(ふふふ‥‥‥打ちひしがれたか‥‥‥無理はないな‥‥‥)
四人とも、放心したように転がっていた。
胸も尻も陰毛も、無防備に晒したままだ。
ティッシュが散乱し、生臭い精液と愛液の臭いが立ちのぼる。
暴漢は四人を見下ろし、リビングの出口に立った。
全員の拘束は解いてあった。
しかし、顔を伏せたまま死んだように誰も動こうとしない。
「早く服を着た方がいいぜ。
まあ、もっとも、旦那も入れて家族での乱交セックスの続きもありだ‥‥‥娘の未央や菜穂とやれるんなら、妻のアソコに飽きた、チンポが小躍りするだろうな‥‥‥」
男は嘲りの笑いを残して、玄関に向かった。
(小便が溜まってたな‥‥‥
済ましておくか‥‥‥)
男はトイレの中に入り、ドア
を開けたまま、用を足した。
(帰って、画像やビデオを
確認しながら楽しむか‥‥‥)
戦果に満足し、気持ちいいほどに、小便が迸った。
(さてと‥‥‥)
まさに放尿が終わろうとした、
その瞬間だった。
凄まじい激痛が背中に走った。
「ギャアァーッ!!」と
この世のものとは思えぬ、悲鳴が口から迸る。
呼吸が一瞬止まり、絶命したかに思えた。
(何が‥‥‥あったんだ‥‥‥どうして‥‥‥)
身体がバランスを崩して、
前によろけた。
生温かいものが、喉から口に込み上げる。
背中には家庭用の包丁が、やや下方から深々と刺さっていた。
(うううっ‥‥‥痛えッ‥‥‥)
包丁の切っ先は、横隔膜から肺にまで届いて、傷口からは鮮血がシャツを濡らしている。
「痛え‥‥‥いてえョ‥‥‥」
男は痛みに耐えながら、必死で顔を後ろに捩った。
「おまえ‥‥‥」
目を見開いた先には、無表情な
全裸の美紀が、返り血を浴びて、立ち尽くしていた。
「帰さない‥‥‥子供たちの
未来のために‥‥‥」
抑揚のない言葉が、美紀の口から漏れた。
男の口から「ゲホッ!」という
濁音と共に、大量の血が吐き出された。
あぶら汗が全身に噴き、激痛に足元がよろける。
「痛てえょ‥‥死んじまうじゃねえかよ‥‥‥いてぇ‥‥‥」
男が呻きと共に、悲痛な声を
上げた。
美紀の表情に変化はない。
呼吸が荒くなり、意識が朦朧と
し始めた。
「助けてくれ‥‥‥救急車を
呼んでくれ‥‥‥」
情けない声を震わせ、男の右手が前に伸びた。
「頼む‥‥‥死にたくねぇ‥‥‥」
苦痛に歪む顔が迫る死の恐怖に怯え、哀訴の言葉が血と共に噴きこぼれる。
「わたし達、やめてくださいと何回言った? 許してくださいと何回言った?助けてくださいと何回言った?‥‥‥」
言葉の語尾に、嗚咽が滲んだ。
美紀の感情が蘇り、激情が迸った。
(女は魔物だ。例え、何度犯し嬲り抜いても、シャアシャアと口を拭い、明日からは何もなかったように生きていく。
男の想像を超えた生き物だ‥‥‥)
男の薄れゆく意識に、先人の言葉が急に蘇った。
「そんな傷の痛みなんか、わたし達の痛みに比べたら、なんてことないわよ!」
美紀の言葉が鼓膜に響いた。
男の口元に微かに笑みが、
浮かんだ。
(犯してイカせた‥‥‥征服したと思ったのにな‥‥‥)
男の身体が音を立てて、前のめりに崩れ落ちた。
身体が激しく痙攣し、意識が遠のいていく。
(まあ‥‥‥いい‥‥‥これもありだろう‥‥‥)
「ただいま!疲れたあ!!」
明朗で幸福な男の声が、鼓膜を微かに撫でた。
(地獄へようこそ‥‥‥)
男の意識は永遠の闇に
塗りつぶされた。
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