何日か経って、もらった下着を持って再び文房具屋を訪ねると、おばさんは僕の顔を見るなり店終いの準備を始めた。
本日休業の看板を出して、すっかりシャッターを閉めてしまうと、僕を奥の座敷に上げて、戸を全て閉め切る。
それから、僕を机の前に座らせて、自分もその正面の席に座った。
僕が汚れた下着を怖ず怖ずと手渡すと、最初、おばさんは、ただじっとそれを見詰めていた。
そのうちに、手の中でゆっくりとそれを広げて、僕が付けた精液の染みを確認する。
その時、おばさんの顔が、一瞬ニヤリと歪んだような気がした。
その直後、おばさんは、いきなり手に持った自分の下着に、顔を近づけた。
そのまま、顔の下半分を下着で覆い、大きく息を吸い込む。
僕がびっくりしていると、おばさんは、下着で鼻を覆ったまま、深呼吸をするように何度も息をし始めた。
僕はただ呆然と、精液の匂いを嗅ぐおばさんの姿を見詰めていた。
栗の香の虜になったおばさんは、取り憑かれたかのように、自分の下着に顔を埋めている。
その目は、とろりと蕩けたように虚ろで、小刻みに振動している黒目は、狂人のようにずっと天井を見上げている。
やがて、僕の視線に気づいたおばさんが、やっと下着から顔を外した。
しばらく息を整えてから、話し始める。
「驚いた?」
「恥ずかしいけど、初めてなの。精液の匂いを嗅ぐのは・・」
僕が何も言えずに黙っていると、おばさんは、恥ずかしさを振り払うかのように早口で捲し立ててくる。
「気味が悪いんでしょう?、きっと嫌いになったわよね。」
「でも本当は、みんな同じなのよ。若くてかわいい娘でも、醜いおばさんでも。」
おばさんは僕から視線を外して俯くと、告白をするように話し続けた。
「性の対象にされるのが嬉しいのよ。」
「自分のために射精して欲しくて、堪らないの。」
「まだ、わからないでしょうけど・・」
「発情した沢山の男に追い駆け回されて、先を争って求愛されて、勃起した男に毎晩せがまれて・・それが望みなの。」
「みんな隠して言わないだけ。」
僕は相変わらず、黙っておばさんの話を聞いていたが、もしかすると顔が赤くなっていたかもしれない。
「ごめんね。勝手に舞い上がって。」
「でも・・濃厚ね、君の匂い。クラクラしちゃった。」
おばさんはここでもう一度、下着に顔を埋めると、うっとりと瞳を閉じて息を深く吸い込んだ。
「はあぁ~・・まるで、直に・・・やだ、ごめんなさい。」
僕はいつの間にか硬く勃起していた。
だが心のどこか片隅で、申し訳ないと言う気持ちも膨れ上がっていた。
おばさんは、自分のために射精したと信じているのだ。
本当は、アイドルの脚を見ながら射精したのに・・
「ねえ、ところで・・」
夢から醒めたおばさんが、再び話しかけてくる。
「どこでしたの?」
「見つからなかった?」
「ほんとうに穿いてみたの?」
「詳しく教えて。」
おばさんは頬を紅色に染めて、少女の様に燥ぎながら矢継ぎ早に質問してくる。
僕はおばさんの勢いに押されながらも、真面目に返事をすることにした。
この時すでに、おばさんの事を少しだけ好きになり始めていたのかもしれない。
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