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強姦輪姦 官能小説

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投稿者:綺愛蘭
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 太いペニスが膣を貫く。

「ううっ」
と私は喉を絞った。
 肌と肌を衝突させ、雄型の肉と雌型の肉を結んで、開いて、また結ぶ。
 びじゅっ──と何度か音をたてていた膣もしだいに男の形を覚え、ひだが伸び、陰部全体が笑ったようにふるふる揺れている。
 奥の子宮、外のクリトリス、入れて、抜いて、陰圧、陽圧、子宮、クリトリス、入れて、抜いて、奥へ、外へ、ずぶずぶと工具で掘削するような彼の腰使いに私は、食いしばった歯をかたかたと鳴らす。

 下腹部の力をふっと弛めると、私は呆気なく絶頂した。
 余韻が心地いい。
 痙攣にも慣れてきた。
 昨夜のバスルームで身に纏ったエチケットの香りはどこにもなく、どこか女子トイレの匂いにも似た雰囲気に包まれていた。
 私はオブラートが欲しかった。それはコンドームだったり、優しい言葉だったり、暖かい毛布だったり。そういうものにくるまったまま、蝶の成虫になるその日まで、陽の当たらない場所で眠りたい。 そうして眠りから覚めて最初に出会う男性と、私は結婚しよう。
 私の頭の中でロマンチックな物語が膨らみ、やがて私は目を覚ました。そこは自分の部屋で、私はベッドに寝かされていた。
 けれども一人きりではなかった。朝丘拓実が隣にいる。……それに、……それに、知らない男らが私たちを取り囲むように円をつくり、こちらを見下ろしている。

「……きゃ……ぐ……う」

 悲鳴を上げようとした私の口を誰かの手が塞いだ。手は無数にあった。それは私の乳房に、手足に、そして膣に群らがった。
 息が苦しくて、事態が飲み込めなくて、悔しくて、気持ちよくて、惨めで、絶頂するほど上手くて、ほとんど訳がわからない。
 時間がどれだけ経過しているのか、相手が何人いるのかもわからない。
 そうやって自分が彼らに輪姦されていると認識したときには、私の体はもうぼろぼろになっていた。

「彼らはみんな僕の仲間さ。有栖川美玲のファンであることを証明する、ライセンスの取得者ばかりだよ」

 休戦状態の中で朝丘拓実がそう言った。なかなか口を割らない私に業を煮やし、仲間の何人かを彼がここに招いたらしい。
 部屋の状態も酷かった。洋服、下着、アクセサリー、化粧品、生理用品、媚薬のアンプル、彼らが持参したアダルトグッズ、それらが部屋中に散乱し、精液の異臭を漂わせ、私自身も臭っていた。

「僕らはただアリスに会いたいだけなんだよ。君が白状するまで、僕らは帰らないよ」

「……わかったわ」
と投げやりに私は呟いた。
 彼らの表情にも明るい陽が射す。

「……教えるから、……その前にシャワーを浴びさせて?」

 それだけ言い残し、私は勝手にバスルームに向かった。追いかけてくる者は誰もいなかった。
 バスルームにはまだ夕べの水滴が残っていた。熱めのお湯を頭から浴び、すくうように手で顔を覆い、肩、バスト、ウエスト、ヒップ、足先まで撫でると、陰部の違和感を丁寧に洗い流した。
 洗っても、洗っても、落としきれない汚れだってあるだろう。涙の代わりに、シャワーのお湯が私の頬を濡らしていった。
 バスルームを出て、ふたたび彼らに全裸を披露した後、私は普段着に着替えた。相変わらずの顔ぶれの前で、私はてきぱきとメイクを始める。

「いつまで待たせる気だ。君のお洒落に付き合うつもりはないんだぞ」
と朝丘が痺れを切らして声を荒げる。

「これが済んだら教えてあげる」

「レイプされて度胸がついたか。それもまた魅力的かもな」

 そんな言葉を受け流し、私は鏡の中の自分に色気を施していく。そうして髪をセットし終えると、私は目線を彼らに合わせた。

「玲奈がどこにいるのか、まだわからない?」

 凛とした態度で私は言った。

「わからないから、こうやって君に訊いているんじゃないか」
と朝丘。

「これでも?」

 そう言って私は自分の着衣の胸元をはだけさせ、ブラジャーから乳房を露出させた。
 それを見た朝丘の目から自信が消えるのがわかった。

「……その黒子は、……まさか」

「あたし、左の胸に黒子があるの」

「そんなはずはない。だって君は、右側の乳房に黒子があって、……盗撮した映像にも……ちゃんと」

「それっていつの映像の話?最近はいつ確認したの?」

 動じない私に対して、朝丘は明らかに狼狽えていた。

「今日だってずっと、あたしのことをレイプしていたくせに、ぜんぜん気づかなかったの?」

 しだいにギャラリーがざわつき始めると、朝丘の顔はますます青くなっていく。

「あたしが鮎川玲奈よ」
と同時に、自分が有栖川美玲だと私は告白した。

「……君が、……アリス?」

 言った朝丘の顔色がまた変色していくのが窺える。

「……裏切り者」

 どこからかそんな声が聞こえてきた。彼の仲間の一人だろう。

「……ファン失格だな」

「……いいや、人間失格だよ」

 また別の声が飛んできた。

「……僕らのアリスを傷物にした」

「……そうだ、おまえのせいだ」

 そんな声の中心にいた朝丘は、
「……待てよ、……みんなだって……アリスに乱暴を」
と情けなく言った。

「……言い訳をするな。おまえが間違えたんだ」

「……せっかく協力してやったのに」

「……不思議の国に監禁だ」

「……トランプの兵隊に裁いてもらえ」

「……返せ」

「……僕らのアリスを返せ」

 不気味な声は波となって朝丘を飲み込んだ。

「……ち……違。……僕は知らない……僕は」

 そう言って彼は玄関まで飛んで逃げると、ドアの内鍵とチェーンを外し、慌てて外に走っていった。残りの男らもそれを追ってすぐに部屋を出ていった。
 しばらくは騒々しく聞こえていた彼らの声も、やがて生活音の中に紛れ、部屋は静けさを取り戻した。
 私一人が置物のようにそこにいた。彼らがいなくなった後も、完全に悪夢から解放された気にはならなかった。

 私は鮎川玲奈。そう、有栖川美玲の芸名で数々のヒット曲を世に送り出している歌姫。
 そして私はレイプされた。それは何故なのか──。
 その時、私の意識に侵入してくる音があった。

「はい」

 私は明るく返事をした。すると玄関のドアが外側に開き、骨格の細い人影がそこに立っていた。
 彼女は『私』だった。
 いや、『私』が彼女だとも言える。

「玲奈、この部屋、どうしたの?」

 室内の散らかりようを見て、彼女はわざとらしい第一声を上げた。

「見ての通り、何でもないよ」
と私は温度のない言葉を返した。

「やっぱり、怒ってるよね?」

「もう終わったことだし、あたしはぜんぜん平気」

 そこで姉妹の会話が途切れる。彼女が玄関のドアを閉めた後も、部屋の温度が温まることはなかった。
 こんな面倒臭いことになったのは、私の双子の姉、麻莉子(まりこ)がストーカー被害に悩まされていたことが発端となっている。
 それがいつ頃から始まったことなのか、気づいたときにはアパートの郵便受けが荒らされていたり、出したはずのゴミ袋が消えたり、ベランダに干しておいた下着が盗まれたりと、身の毛もよだつような思いをしていたという。
 そしてある日、しばらくのあいだお互いの身分を交換しないかという提案を姉の麻莉子から出された私は、とうぜん難色を示す。麻莉子のことは心配だが、リスクを被るのは気が引けたからだ。
 それでも姉は譲らなかった。妹の私が会社で残業をしているあいだに、アパートの周辺を自ら張り込み、ストーカーの尻尾を掴むのだと麻莉子は息巻いていた。
 警察は当てにならない、ということも言っていた。二人の身分を交換することは昔からやっていたので、そこは特別ネックだとは思わなかった。
 結局私のほうが折れるかたちで、麻莉子がメディアに露出し、私が会社勤めをする奇妙な生活が始まった。
 そうして世間を知らな過ぎた私は、今回の悲劇へ繋がる道のりを、麻莉子の誘導によって歩かされていたのだった。
 昨日からずっと聞こえていた耳鳴りは、おそらく麻莉子の心の声だったのだろう。一卵性の双子にしか聞こえない、テレパシーのような心の呟き。

『あなたはレイプされる』

「あたし、玲奈に謝らなければいけないことが、いっぱいある」
と部屋に上がるなり麻莉子が言った。

「何を謝るの?」

「玲奈があの人たちにレイプされていたのに、すぐそばで聞いていたのに、あたしは何もできなかった。警察に通報するのも怖かったの。だって……」

「……麻莉子?」
と私は震える姉に寄り添った。

「……だって、あたしが通報したことをあの人たちが知ったら、今度はあたしがレイプされるんじゃないかって、あのときはそう思ったの。……だから、……ごめんなさい」

 そう言う麻莉子の声が、涙で滲んでいくのがわかった。

「あたしにもわかるよ、麻莉子の気持ち」
と姉に優しくする自分が自分で怖かった。さらに私は続ける。

「あたしが麻莉子の立場だったら、きっとおなじことをしたと思うから」

 そんなふうに許してみせる自分は、ただ強がりを言っているだけなのだろうか。

「まだあるの。玲奈に謝らなきゃいけないことが、まだ」

 私とおなじ顔をした麻莉子はそう言って、長い睫毛を瞬かせた。

「朝丘光司さんと玲奈が別れた原因は、あたしにあるの」

「……え?」

 自分の中でスイッチが入るのがわかった。

「一度だけ、玲奈の振りをして光司さんに会いに行ったことがあるの」

「……ちょっと待って」

「そうしたら彼、いきなりあたしにセックスを迫ってきて。あたしは拒否しようとしたんだけど、何ていうか、レイプみたいな感じになっちゃって」

「そんなの……あるわけが……」

「多分そのときのことを、彼はさっきの弟に言ったんだと思う。『逝かない女』って」

 私は絶句した。妹の知らないところで姉は妹になりすまし、妹の恋人と密会していたことになる。

「それがきっかけで、あたしのほうがヒステリックになっちゃって、それで喧嘩に」

 目のまわりを赤くしながらも、麻莉子はさらに信じられないようなことを口にした。
 彼の子どもを妊娠して、中絶したのだ、と。
 さすがに部屋の空気も凍りついた。ペイズリー柄のカーテンひとつにしても、冬枯れの老木にぶら下がる葉っぱのようにも見える。
 自分だけのお城だと思っていたこの部屋も、その面影さえも残されていない。私は裏切られたのだ。

「……ごめん、……玲奈」

 ついでのような麻莉子のその台詞も、もはや何の意味も持たない。
 私をレイプしたあの男たちの残骸が、床に座ったままの私のまわりに散らかっている。その景色に色はなかった。
 白黒の濃淡だけの景色の中にも、唯一光るものがあった。それは朝丘拓実が置き忘れていった物に間違いなかった。
 胸が震え、膝が笑い、漆黒が私の脳内を埋めていく。そこで私は麻莉子に向かってこう言った。

「……麻莉子の胸で……泣いてもいいかな?」

 それに応えるように、麻莉子は無言で頷いた。そうして私たちは互いを支え合うように寄り添い、麻莉子の死角で私はナイフを手に取った。

「もう玲奈には迷惑かけないから」
と私を慰める麻莉子。
 私の大切な麻莉子。
 色んな思いが溢れ出し、それでも私は無表情のままで、一つの卵子を分け合った彼女の耳元で囁いた。

「辛かったのは麻莉子もおなじだったんだね。だけどもう大丈夫。これからもあたしが麻莉子の身代わりになってあげる。だから──」

 利き腕である右手に鈍い手応えを感じると、私は最後にこう付け足した。

「──だから、今日からあたしが麻莉子だよ」

 自分では菩薩(ぼさつ)の顔をつくったつもりだったが、それは紛れもなく、冷血に染まっていたに違いなかった。
 彼女の子宮を刺したあたりから脈々と流れる血液は、こんなにも私の手に温かいのに。



おわり

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12/12/25 13:59 (gVD5EERg)
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