歳の差を乗り越え晴れて夫婦となる事が珍しくも無い この世の中…
一見は幸せに映る そんな夫婦家庭…
しかしながら全てが そうとは限らない…
ここに 歳の差を乗り越えて1人の妻 そして 1人の母になった女がいた。
女の名は徳子 35歳…
そして夫は53歳…
女は初婚の身…そして夫は再婚の身…
そんな2人が晴れて夫婦になったのは今から7年前…
その当時は まだ 少なからずや幸せな夫婦であった。
だが 女は悪夢に向けてのスタートを切った事を微塵も感じてはいなかった。
その要因は…
夫の23歳の連れ子の継男…
結婚当時16歳の高校3年生…
その当時は大学受験を控えた大事な時期で敏感な年頃。
そんな時期での父親の再婚…
それも また継男にとっても 徳子 同様に悪夢に向けてのスタートであったのである。
父親の歳の差の再婚に余り賛同できぬ息子は当時より母となった徳子を遠ざけた。
継男にしてみれば当時28歳の徳子の存在は余りにも刺激すぎた。
そうして何よりも徳子の美貌…
美容化粧品販売を職としていた徳子は 職種柄もあり 美には細心を払っていた。
細身のスタイルに美顔…
それは もう充分に男としての成長を遂げた継男には母親と言う存在よりも 充分過ぎる程の1人の女としての存在であった。
母としては認めたく無いと言う葛藤の中で女として意識してしまう継男。
そして血気盛んな年頃が徳子を性の対象として 勉学よりも自慰行為に没頭する日々を送らせた。
そうした環境下で充分な受験を迎えられる事も出来ぬまま 大学受験に失敗してしまうのである。
しかし徳子は そんな事とも知らずに懸命に励ました。
だが 一生懸命になればなるほど継男との距離は遠ざかった。
そうして予備校通いをし浪人するも再び受験に失敗した。
次第に荒れていく継男の姿に 徳子は ただ懸命に励ますのが精一杯であった。
しかし 徳子は そんな苦労をも夫には感じさせまいと明るく振る舞い…
そして それを隠すかのように美にも細心を払い いつまでも美容姿を保った。
苦労を隠す為の徳子の努力は日に日に美しさを増して行く。
しかし それが 何を意味するのか?
徳子は何も感じない所か 己を悪夢に突き進ませている事とは微塵も考える事は無かった。
そうして大学受験を諦め就職する継男…
しかし それも長続きする事もなく転々と職を変えた。
その都度 徳子は必死に励まし続け見守った。
しかしながら一向に継男との距離は縮まる事は無く 更に距離は遠ざかる。
そうして正規社員の道までも外れた継男はアルバイトを転々とした。
そうしていつしか アルバイトまでもを辞め職に就く事も無く荒んで行った。
そして何年かの月日が 荒れた生活の中で過ぎ去った。
変わり果てて行く継男の風貌…
伸び放題の髪に無精髭…
それは 最早 20代の若者の姿とは誰しもが思わなぬほど…
時折口を開く継男の言葉使いまでもが下品に成り下がる程であった。
そうして いつしか部屋に閉じ籠りPCゲームとネット徘徊に没頭する昼夜逆転の日々が過ぎる。
徳子とも顔を会わせる事も無く自室に籠る生活が続いた。
しかし…
継男はゲームの中で徳子を弄んでいた。
没頭するゲーム…
それは鬼畜的な拷問レイプ系…
そして 幾つもあるゲーム全ての被害者の名を徳子として登録しプレイしていた。
徳子の知らない世界で継男の性欲が形を変えて発散されている。
しかし それは序曲に過ぎなかった。
次第に継男の性癖は より過激に歪んで行くのであった。
そうした頃…
夫は会社の新プロジェクトに携わる為に配属が変った。
そうして その頃から夫の不規則な勤務が始まった。
仕事に追われ深夜帰宅も珍しくも無く 徳子は夫の体を気遣いながら 苦悩し苦労する己の姿をひた隠した。
夫も徳子の苦労を理解し それでも美しく そして 明るく振る舞う姿に頭を下げた。
そして夫の配置転換を気に 継男と2人だけの空間を過ごす事が多くなって行く。
それでも苦難を必死に乗り越えようとする徳子。
そんな日々を送っていた ある日の事…
2階の自室に引き籠りきりの継男が珍しく降りて来る。
そして徳子とは目を会わせようともせず玄関に向かった。
「ど…どうしたの? 何処に行くの?」
徳子の問いに答える事も無く無言で家を出て行った。
溜め息を吐き 手で顔を覆う徳子…
目尻からは涙が伝った。
そして…
誰もいない家を見渡す徳子…
足は無意識に2階へと向いていた。
すると…
何時もなら必ず施錠をし閉じたままの継男の部屋の扉が少し開いていた。
徳子は何年かぶりに扉の隙間から部屋を覗き込んだ。
部屋の中は散らかり放題に荒れていた。
徳子は何も躊躇う事も無く ただ 母心的に掃除をしようと思いつつ扉を開けた。
「うっ…何…この臭い…」
生臭い臭いが入り混じった男臭が徳子の鼻を刺激した。
「嫌だ…あの子ったら…」
徳子は口と鼻を片手で覆いながら 床に散らかった雑誌に手を伸ばした。
手にした雑誌を見て徳子は目を見開き驚いた。
「な…な…何よ…この雑誌…」
それは 女が緊縛され屈辱された姿ばかりを載せた写真集であった。
徳子は驚き余りに散らかる雑誌全てに目を向けた。
「……………!」
徳子は声を失った。
その全てが明かに屈折した性癖を表すような雑誌などであった。
痛々しく拷問屈辱を受ける女の姿…
そして徳子は鼻をつく生臭の正体をも目にしてしまう。
小さなゴミ箱から溢れた使用済みのティシュの山…
その全てに 自慰により射精された精液が染み込んでいた。
徳子は身震いし雑誌を投げ捨て部屋を飛び出した。
そしてダイニングテーブルに頭を抱えるようにして座り込んだ。
「どうしてなの?」
徳子は落胆し嘆き哀しみ放心の時が過ぎた。
そうしている間に継男が帰って来る。
徳子の側を無言で通り過ぎる継男…
いつもなら反応が無くとも 必ず顔を会わせれば声を掛けるように心掛けていた徳子であったが その時だけは声を掛ける事も顔を見る事も出来なかった。
そうして2階から扉が閉まる音だけが虚しく響いた。
そして その夜…
「どうした? 気分でも悪いのか?」
夜遅くに帰宅した夫は徳子の浮かない様子を問う。
「い…いぇ…べ…別に何でも無いわ…ちょっと疲れただけ…」
徳子は昼間にあった出来事を話す事は出来なかった。
そして…
夫の口から思いもしない言葉を聞かされる。
それは…
2ヶ月にも及ぶ海外出張の辞令…
徳子は言葉を詰まらせた。
それと同時に徳子の胸に一抹の不安が過った。
「どうした? 本当に大丈夫なのか?」
余りにも浮かない表情を示す徳子に対し夫は再度問うた。
「い…いぇ…本当に大丈夫だから…で…出張は何時からなの?」
「あぁ…再来週からだ…すまないが留守の間…継男を頼む…」
そう言いながら2階に向けて指を指す夫。
徳子は悟られまいと 笑みを浮かべ返事をする。
その様子を 扉の影から隠れ覗き 聞き耳をたてている継男の姿が…
そして薄ら笑みを浮かべながら2階へと消えて行く。
遂に継男の謀略が動き始めた瞬間でもあった。
何も知らない徳子…
今日 見た忌まわしい出来事は胸に仕舞い込む徳子…
しかし…
あの全てが徳子に向けられていた行為だとも知らずに…。
続。
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