その日から壮絶なる拷責めが徳子を襲う。
昼夜問わずして 卑劣すぎる継男の性癖が徳子に叩き付けられた。
止まる事も無き継男の性欲…
手を変え品を変え 徳子に叩き付けられる緊縛拷責の数々…
徳子の精神と肉体は限界に達する。
毎夜の事 獣にも似た呻声が 近隣の睡眠を浅くする。
夜風に紛れ 微かに聞こえる得体知れ無き喘声…
しかし近隣の誰しもが それが徳子のものだとは微塵も感じる事は無かった。
予てより継男の寄行した生活を知る住民に取っては 紛れもなく その主は継男と誤認させていた。
その事により 更に 近隣住民の足を遠退けた。
面倒事を避けるように 見てみぬ振り そして聞かぬ振りをする住民達…
徳子の微かな助けの希望の喘ぎは 無惨にも届かないのであった。
微かな希望は もうすぐ あと少しで夫が戻る…
それだけが唯一の心の拠り所…
そう固く信じ徳子は必死に 継男の欲望から耐えた。
そして…
遂に その時が訪れようとする。
昼夜問わず責め続けられた徳子…
「いよいよ今晩で御仕舞いだな…」
身の心も疲れ果て 身を継男に委ねて来た徳子を見つめる継男。
縛られ責め続けられ疲れ果て放心する徳子…
徳子の胸に…
【今夜で終わる】
その言葉だけが染み込んだ。
しかし…
その夜は何もされる気配は無かった。
徳子は次第に深い眠りに堕ちた。
そして その夜から継男は姿を消した。
そうして 幾時を眠ったであろうか 肌寒さを感じ目覚める徳子…
既に陽が登っていた。
目覚めた徳子は戸惑った…
あれほど己を苦しめた拘束器具は解かれ それどころか 壁一面に張り巡らされいた 己の忌まわしき写真すら無くなっていた。
部屋を見渡す徳子…
あの忌まわしき玩具すら姿を消した 何も無かったような空間…
しかし 徳子の裸体に刻まれた縄痕と子宮に宿る子の重みが 事実だった事を証していた。
そして…
徳子の側に置かれた携帯電話のメール着信があった事を示すシグナルが目に留まる。
そこには夫からの帰国時間を記したメールが…
徳子は大粒の涙を溢し 携帯電話を胸に強く抱き締めた。
そして 今まであった事を己の胸に固く封印する事を誓う徳子であった。
そして…
継男が失踪したまま 新たな夫と2人数だけの生活が始まる。
お腹の子を労りながらの 複雑な生活が過ぎて行く。
しかし 徳子は笑顔を絶やさなかった。
そうした ある日の言葉…
徳子と夫は継男の不慮の死を知らされる。
しかし 徳子の瞳は濡れる事は無かった。
死をもってしても あの忌まわしき時間は 何もにの置き換える事は出来なかった。
そうして 徳子と夫は世間から隠すようにして継男を葬った。
そして月日早くも臨月を迎えるまで過ぎて行く。
そうした ある日の産婦人科に向かう途中の事…
徳子は 背後から誰かに尾行されているような気配に気付く。
しかし振り向けども誰も居ない…
道中において何度も気配を感じる徳子…
その時…
路地横から 若い男2人が飛び出し 徳子を挟むようにしつ立ち塞がった。
「きゃ! 何なの!? あなた達!」
徳子は咄嗟に手提げ荷物を抱え 大きく膨らんだ お腹を庇った。
すると1人の男が…
「へぇ~ 良く似てるよな~」
男は徳子の顔を除きながら言った。
「な…何なんですか! 警察を呼びますよ!」
徳子は気丈に男を睨み返した。
「警察? 良いのかね~ そんな事を言ってて~」
徳子には意味が解らなかった。
すると衝撃な言葉を もう1人の男から聞く事となった。
「あんな違法な薬…密輸して…小便垂らして失神プレイに没頭してたのは誰なんだ? 奥さん? あんたじゃねえのか? 口元はフェラ用のラバーで隠れてんで解かんねけど…似過ぎなんだよな…あんたの顔…」
徳子は絶句した。
走馬灯のように甦る 封印したはずの記憶。
それと同時に この男達が 何故に あの忌まわしき出来事を知っているのか 徳子の頭は錯乱した。
すると…
「そうそう…その驚いた時の目…カメラに向いてた目にそっくりだ…」
徳子は言葉を失った。
「色んな薬剤と道具を自分で買ってよ…腹違いの息子を…あんな挑発的な下着と厚化粧で抱き込んで…旦那の出張中に変態プレイに没頭ってか? もしかすっと…この腹は…その時のガキか?」
男は卑劣に膨らんだ腹に指を差した。
徳子は居たたまれなくなり 男達を跳ね除けるようし 逃げるようにして その場を立ち去った。
混乱錯乱する徳子の頭の中…
どう結論付けようと あの男達が あの出来事を知ってる事に答が見いだせなかった。
今となっては問いただそうとも もう継男は居ない。
徳子が答を出せぬのは当然の事…
継男は計画当初から 徳子を装いブログを開設していた。
そして そのブログに 徳子目線で偽文を記した上に 数々の画像や映像を配信していた。
それは徳子直筆の あの宅配便の着払い伝票までもが配信されていた。
あたかも 継男を誘惑しプレイに没頭したかのように綴られた偽ブログ。
しかし閲覧する者は あの徳子の挑発的な下着姿と厚化粧に疑う事はしなかった。
そんなブログの存在すら知らぬ徳子は その日を境にして 人目を背中に感じながら脅える日々を過ごす事となった。
見る者 全てが あの出来事を知るやも知れない…
そうした呪縛は 次第に外出をもする事無い閉じ籠った生活を送らせた。
そうした日々の中で陣痛が訪れる。
「元気な 男の 赤ちゃんですよ…」
看護婦から無事を伝えられ安堵する徳子。
元気な鳴き声を耳に 徳子の表情は明るかった。
そして 必ずや この赤子を 夫との子として育てよう…
誰に虐げられようとも跳退けて生きて行こうと固く誓う。
しかし…
その決意は 早くも崩れ去る…
「ほら~ お母さん~ この子の…右腕に…ほらぁ~ 綺麗に三角に並んだホクロがあるんですよ~」
看護婦は赤子の袖口を捲り 徳子に確認させるように見せた。
それを見た徳子の表情が一変する。
それは…
紛れも無く 継男と同じ場所同じ数のホクロ…
あの忌まわしき時間を裸で過ごし来た徳子の記憶に鮮明に焼き付いていた。
事がある毎に目に止まった あの継男のホクロ…
徳子の精神は一気に崩れ去る…
「い…い…いゃぁ!!! もう許して!!!」
徳子の絶叫が病室に響き渡る。
そして…
徳子は まだ知らない…
あのブログが 今もなお存在する事を
…
継男の呪縛は永遠に終わらない…。
第1幕……完……。
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