妄想11話……
徳子の居場所を確認した男のその後の日常は またしても あのDVDを入手した時の頃のように豹変する。
あの熟した大人の女に変貌を遂げた徳子の容姿が頭から離れる事の無い日々が無情にも過ぎ去る。
また仕事も休みがちになり徳子を想う時間を延々と過ごし自慰に明け暮れる男。
何もかもが再び狂いだした男の知性と理性…
もう歯止めが効かなくなって居る事すら男には理解できず己の想う欲だけが正しい選択だと思い始める。
やはり客人の感じた通りの結末が待ち構えている現状が刻一刻と押し迫って来る。
そして…男にとって理性を完全崩壊させる決定的な出来事が起こる。
一通の封書が自宅に届く…
差出人は勤務する会社からの物であった。
無断欠席を繰り返す事 早二週間…
遂に解雇の通告が文書と言う形で告げられた。
男は もう 何も無くなった…
働く気力をも失う程に徳子に取り憑かれた男の結末が遂に訪れた。
解雇と言う出来事が男を更に誤った道に走らせる結果となる。
「もう…どうなったって良い…」
男の心の中で欲望の種を完全開芽させた瞬間であった。
それからと言う日々は取り憑かれたように徳子を犯す妄想が男を夜な夜な襲う。
そして遂に…
「もう…限界だ…」
男は理性をも無視した卑劣な計画を企てるようになる。
何日も何日も繰り返し徳子を己の物にする計画を探る男。
そんな日々を送っているある日の事であった。
男は ふと 客人の手紙の事が頭に過った。
「あ…そうだ…あれだ…」
男は客人からの手紙が入った封筒を漁り探す。
そして…
手にした一枚の名刺…
あの客人が最後の砦として男に差し伸べた悪魔の名刺。
男は客人の手紙を再度読み返す…
そして…
【下手しないように段取ってもらえ…話は付けてある…】
男は客人の書いた この文章だけをひたすら頭に刻む。
【話は付けてある…】
もう男には迷いは無かった…
「よし…待ってろよ…徳子…」
男は次の日に銀行に行き 有りったけの現金を引き出す。
そして消費者金融からも借りれるだけの融資を受ける男。
まとまった現金の束を自宅のベッドに腰掛け眺めながら例の名刺を手にする。
そして片手に携帯電話を握り締め生唾を飲む。
「よし…俺には…もう…何も無いんだ…俺には…」
歪んだ理性が男を悪魔の世界に引き摺り込む。
そして…
「あの…もし…もし…」
遂に禁断の扉を開いてしまう男。
「○○○企画ですが…」
「あ…あの…○○さんからの紹介で電話したのですが…☆☆様は?」
「あ!**さんですね?話は伺ってます」
客人の名前を出しただけで話は通じる手廻しの良さに男は驚いた。
「は…はい…そうです…」
「やっぱり…ダメでしたか?解ります…貴方の気持ちが…」
男は電話口の男の言葉に何故か同じ同志的感覚を覚え緊張も解れた。
「電話では何ですから…出来ましたら一度会いませんか?協力は全面的にさせてもらいますんで…」
男の言葉に救いを感じ直ぐにでも会う事を取り付け男は電話を切った。
電話を切るや否や急いで身仕度をし現金の束をカバンに詰め込み足早に家を出る男。
そして待ち合わせの場所まで急いで足を運んだ。
落ち合う場所は寂れた喫茶店…
男は店に入り電話で指示された通りに店主に声を掛ける。
「あの…ここで…☆☆さんと打ち合せを…」
言われた通りに店主に声を掛けると店主は微笑みながら男を店の奥にと案内した。
通された店の奥には部屋があり 此処でしばらく待つように店主から言われソファーに腰掛け待つ。
すると数分の間に一人の男が入って来た。
「いゃぁ…お待たせしました…」
電話口の男が急々と入って来る。
そして軽く挨拶を交わしソファーに向かい合わせに腰掛ける男2人。
「緊張しなくても良いですよ…」
男の言葉が優しく場を包む。
男は自分より少し歳が上の感じの男…
しかし…確実に裏社会との係わりが有る事はヒシヒシと伝わる感じの男であった。
「じゃ…堅い話は抜きにして…早速…」
男から話が切り出され早速にも本題に移った。
「話は○○さんから聞いてます…此処に来たと言う事は…もう…その女に限界が来ましたか?」
率直に話を切り出す男に対し何故か不思議と安心感を覚える男は包み隠さず今の想いを話す。
そして男の話を総て受け身で聞く男は話を聞き終えると言った。
「解りますよ…充分に…」
そして…
「○○さんには若い頃 凄くお世話になりましてね…今…自分があるのも○○さんのお陰なんですよ…この話を聞いた瞬間…やっと恩が返せると思ったんですよね…」
続けて…
「自分達が完全に完璧に段取りしましょう…その女…完璧に貴方の元に届けます…」
この男の本業は一体なになのか?
男には理解しえない裏稼業だと言う事だけは理解できたが今の男には頼もしい存在の男だった。
「で…その女は今は普通に暮らしてる一般人と聞いてますんで…今回は…ちと…○○さんの紹介って事もあるんで…下手打たないように有りと有らゆる手を使おうと思ってます」
そして…
「あ…でも心配は要りませんよ…必ず完璧に拉致って来ますから…」
男の心臓は高鳴り興奮する。
「それと…報酬ですが…幾ら迄…用意出来ます?○○さんの紹介だから貴方の出せるだけで自分達は全然構わないですから…」
最後に確信の報酬を決める話にと進んだ。
「あ…ぁ…それは…有り難い事です…」
思わぬ言葉に男も安堵した。
そして…
男はカバンから現金を取出し男に見せた。
金融からの札束は出さずに己の全財産を男に確認させる。
「これで充分ですよ…」
男の言葉に胸を撫で下ろし最終の取引を終え 後程に連絡を取り合えるように携帯番号の交換をし店を後にする2人。
総ての想いを男に託し足早に家路に着く男。
遂に悪魔の船に乗ってしまった男は拉致屋なる男からの連絡を待つ日々をひたすら過ごす。
迫り来るであろう念願の時を夢見ながら毎日を職も失って何をするでも無く淡々と過ごす日々を送る。
たまに例のバーに足を運ぶだけの生活が男の日常となっていた。
しかしバーに行くもボーイからの話によると あの客人は あれから顔を見せなくなったようである。
何故か最後に会いたくなる気持ちが男を包むも叶わぬ事であった。
そして…ある日…
バーに足を運んだ時であった。
ボーイから思わぬ事を耳にする…
「○○さん…また…やっちゃったみたいですよ…」
「え…? 何を…?」
「決まってるじゃ無いっすか…強姦ですよ…」
男は耳を疑った…
そして…あの手紙に書かれていた一文を思い出した。
【俺も…まだまだ足を洗えてないな…】
男は自分が客人を引き戻してしまったかのように思え少し落ち込んだ。
「で…捕まったのか?」
「何やら初恋の女の娘とその子供を犯っちゃったらしいです…」
そして…
「でね…その娘の子供は中学生だったらしいですよ…まったく…昔のままです…それで…お縄くらって…懲役ですって…」
男は更に自分と同じような境遇の犯行に驚いた。
しかし男の理性は既に崩壊済み…
客人の犯行が男に最後の教えを伝えているかのように伝わった。
《下手すりゃ…俺みたいにお縄だ…だから…しっかり犯れよ…同志よ…》
歪んだ男の心には客人の犯行に歪んだメッセージを感じ取ってしまう。
もう悪魔に染まった男には何事にも己の欲が最優先のように感じ伝わっている。
そして男は歪んだ決意を胸に刻むのであった。
男は酒に溺れながらも歪んだ決意は揺らぐ事無く日々を過ごして行く。
やがて拉致屋なる男との密会から一ヵ月を過ぎ男の欲望も我慢の限界に達しようとしていた。
「まだなのか…? もう我慢できねえよ…」
男は己を慰めながらも必死に歪んだ理性で欲を制する。
「ダメだ…後一日待って連絡が無かったら…」
男がそう思った矢先の事であった。
携帯の着信音が…
慌てて着信相手を確認する男。
そこには拉致屋なる男の番号が…
「来た!!!!!!!」
男は待ちに待った拉致屋からの電話に歓喜する。
「もしもし!!!!」
慌てて電話口に出る男は興奮声で答える。
「いゃぁ…お待たせして…すみません…」
「は…はい!!!!」
興奮する男の声は裏返っていた。
「まぁまぁ…そう興奮しないで下さいよ…」
拉致屋の失笑する声が男を少しは興奮から覚めさせた。
そして…
「今回は…かなり手を掛けて拉致する段取りをしてまして…ようやく日取りが決定です…」
男は生唾を飲み話の続きに聞き入った。
「それで急ですが明後日に女は○○空港から韓○に出発します…あ…ご安心下さい…総てが仕組んだ物ですから…」
そして…
「で…明後日の朝10時に○○空港に来て下さい…女が間違いないか確認の為に…」
男は二つ返事で速答した。
「それで…貴方には別の場所で女が運ばれて来るのを待ってて貰います…ですから当日は身仕度もして来て下さい」
続けて…
「そこで2人っきりの世界が待ってます…存分に想いを遂げて下さい…何をしたって構わないですよ…殺しさえしなければ…後は自分達が揉み消しますから…」
そして最後に付け加えるように…
「あ…心配は要りません…今回の計画は…警察や政治家も裏で使った計画ですから…絶対に公にはなりませんから…ご安心を…」
そして空港内での待ち合わせ場所を指定され電話は終わった。
男は もう 天にも昇る気持ちであった。
あの幼き頃に恋い焦がれた徳子を遂に手中に収める時がやって来た。
当然ながら男は その後は徳子を想い自慰に更けるのであった。
悪魔の計画が遂に動きだした男にとっては最高の夜である。
だが…
一方では何も知らずに明後日の旅立ちを心待ちにする徳子の姿が…
周到に計画された拉致劇が一歩…また一歩と徳子に迫る。
幼き頃のあの忌まわしい事から ようやく立ち直り懸命に生き抜き…
そして…
ようやく掴んだ幸せを…
再び悪魔達が狙う…
哀れなる徳子の行く末は…
続く。
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