その日は、会社に着いても思考が働かず、淡々と1日が終わりました。
ただ、彼が顔を覗かせた時だけは、全ての嫌なことを忘れ、自分でも最高と思われる笑顔で接することが出来ました。
でも、一人になると、
(先週のこと、今朝のこと・・・彼が知ったら、どうするだろう・・・)
という、不安に包まれました。
平野と鈴木も、忙しいのか出張に出ているのか、その日から現れることはありませんでした。
また、朝に乗る電車は2本早めて、月曜のようなことがないよう、またあの男に会うことがないように注意を払って過ごしました。
あの3人に会わなければ、至って普通の日々が流れました。週末には彼と落ち着いて過ごし、その溢れる愛情に包まれ、次第に心の闇は消えていくような思いがありました。
それから暫くたった朝、駅へ到着すると「急病人が発生して5分ほど電車が遅れている」、とのアナウンスがありました。
(まぁ、5分程度なら大したことないか・・・)
電車はアナウンスどおり、5分遅れで到着しましたが、遅れた分、あの日と同じように混雑した車内に押し込まれました。
(5分遅れただけでも、こんなに混むんだ)
そう思ったとき、俯いていた目の前でおもむろに携帯が開き、その中の画像が目に入ってきました。
(・・・!!)
顔を上げると、先日の男が立っていました。
「やっと、見つけたよ」
男が耳元で囁きました。
「この画像を見て、毎日君を思い出し、探していたんだよ」
その画像は、先日の車内での私の表情を撮られていました。目を閉じ、口を塞ぐ手を噛み・・・、誰が見ても感じていることがわかる表情でした。
「きれいに撮れているでしょ?毎日、これを見て自分で慰めていたんだよ」
男は携帯をしまいながら、そう呟き、また耳を軽く舐めてきました。
(また、こんな写真を撮られて・・・)
私は、絶望的な気持ちになりました。
男は何の躊躇もなく、パンツのボタンを外し、ファスナーを下ろすと、手を差し込んできました。
男の手を遮るように、手を当てましたが、反対の手で掴まれてしまいます。
この前と同じようにパンストの上から股間を触ろうとしたのですが、その日は少しきつめのパンツのため上手く手が入らないようでした。
苛ついたように男は、私のベルトを外し、パンツの前を大きく広げました。混んでいるとはいえ、誰かが振り向けば見えてしまう・・・。私は自分のかばんで、男の手とともに隠さざるをえなくなりました。
男は安心し、パンストの上から暫く弄ると、パンストを引っ張り、音が出ないように破きはじめました。
(お願い・・・やめて)
すがるように男を見つめましたが、男はにやついたまま手をパンストの中に差し込み、パンティーの脇から指を入れてきました。
さすがにその日は、濡れていませんでした。
しかし男は慌てることなく、反対の手でポケットから何かを取り出すと、その先をパンティーの上からクリのところに押し当ててきます。
(・・・!!)
それは、いわゆるローターというものでした。実際に使ったことはないのですが、一応知識はありました。それが、どの程度のものかはわかりません。しかし、経験のない刺激を与えられ、体中に電気が走りました。
男は、それを強く、弱く、またクリの辺り、あそこの辺りを刺激してきます。今までにない刺激、感覚に私は動揺し、しかしその刺激に飲み込まれてしまいました。体の芯がどんどんと熱くなり・・・。
男も不味いと思ったのか、ローターをしまい、また指で私の股間を弄り始めました。そして、空いている方の手で私の右手を掴み、それを彼のスラックスの中に押し込みました。
もう、私には押し止めるものがなくなっていました。男のトランクスの合わせ目を探し、そこから手を差し込み、熱い固まりを握ってしまいました。
(これが欲しい・・・)
男の指が私の体の中をかき混ぜ、左手を口に当てて、同じように指を噛み、声を堪えた。
(あの時以上に昇り詰めそう・・・)
「何してるんだ!!」
私の左後から声がした。
私は、ビクッとなり右手を引いた。男も手を抜こうとしたが、別の男がその手を掴んだ。
「次の駅で降りろ!」
「大丈夫?」
顔を見上げ、その声の主を見ると、私の顔は引きつった・・・
(平野さん・・・、なぜここに・・・)
「早く、服を直したほうがいいよ」
その声は優しく聞こえましたが、その笑みは不吉な感じがしました。
ターミナルで私を触ってきた男は引きずり降ろされ、私は平野とともに派出所について行きました。
暫く取り調べがあったのですが、私は解放され、遅刻ながらも会社に向かいました。
警察が言うには、平野は「仕事があるので先に行く」、と伝言を頼んでいました。
会社に着くと、総務課長が、
「平野君から聞いたけど、気分が悪くなったんだって?無理しなくても良いのに」
と、言ってきました。
(本当のこと言ってないんだ・・・)
「あっ・・・大丈夫です。軽い貧血みたいなものでしたので・・・」
適当に取り繕いました。
その日も、平野と鈴木は顔を見せないままでした。同じ部署の人に聞くと、やはり出張や外回りで忙しく、帰ってきても遅い時間が続いている、とのことでした。
私は、なぜ平野があの時間、あの場所にいたのか、なぜ接してこないのか・・・、不思議に思いました。
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