8.
僕は自分の気持ちをそれから何時間もかけて伝え続けたが、彼女は断り続ける
ばかりだった。
数日後にまた彼女を部屋に呼んで、更に僕の思いをひたすら話してもまた断ら
れた。
その数日後から彼女と連絡が取れなくなった。
そのまま2週間ほどが過ぎてこのまま終るのかと思っていた頃、彼女と連絡が
取れて何とかまた会う事になった。
僕の部屋でまた話をしたが、彼女はあのレイプされた初日から数日間に何をさ
れ、どう思い、その後に至るまでの事や彼女が何を考えていたかを細かく話し
始めたので黙って聞いていた。
彼女は自分を卑下し、そしてひたすら自分を責めていて、ずっと自暴自棄にな
り、変な意地を張りながらも苦しんでいたとの事だった。
それから僕はまた結婚の話をすると、ようやく彼女は頷いてくれたと同時に泣
き出し、それから3時間も子供のように大声で泣いていた。
今までずっと溜めていた涙なのかと思えるほどだった。
僕の胸で大声でわんわん泣いてる彼女が愛おしくてたまらなかった。
心身共に状態は全て分かっているし、僕しか彼女を幸せに出来ないと思ってい
た。
レイプの後遺症の事も僕が一生支えて行こうと決心していた。
やっぱり僕は何だかんだ言っても彼女の事を最初からず~っと愛していたんだ
と思う。
彼女は泣くだけ泣いた後、照れくさそうに微笑んだ。
話し始めたのは夜だったのに、空が明るくなりかけていた。
その後、やはり彼女の実家の凄さと庶民の僕の実家とでは家柄も違い過ぎ、彼
女のご両親に結婚の了承を得るのにまずは一苦労だった。
その後も仲人がとある代議士夫婦との事に腰を抜かし、結納、披露宴の規模、
来賓のレベル、引き出物、新居などなど、全てが僕の実家の感覚とは違いすぎ
て大変だったが彼女も協力してくれて何とか乗り越えた。
彼女はもう他の男とというのは一切無く、彼女もその線引きは出来ているのは
分かっていたが、結婚式が近づいたある日、ちょっと気になっていた事を彼女
に聞いてみた。
「もし転勤で近くに来たのが僕でなく他のサッカー部員の奴だったら、どうし
てた?欲求不満だったし、こんな風に復活してセックスしてた?」と聞いてみ
た。
すると彼女は頭から湯気を出すほど強烈に怒り、そして泣き出したので僕はひ
たすら謝った。
実際、社会人になってからあの当時のサッカー部員や先輩たちなどから何度も
連絡は来ていたが全て無視していたそうだった。
それに僕が入学当初から彼女に好意を持っていた事を彼女は気付いていたそう
で、休みの日のあんな仕打ちをされながらのデートでも凄く楽しかったそう
だ。
当時は余計なお世話としか思っていなかった僕が書いていた彼女のレポートだ
が、今では心から感謝しているとの事だった。
こんな話を聞いて、正直僕は安心したし嬉しかった。
そして何と思われても構わない僕はサッカー部のメンバーを結婚式に胸を張っ
て招待した。
最初、彼女は嫌がっていたが、今後は僕が彼女を守り「もう菜々美に手を出す
な」という意味も含め、2人であのサッカー部の日々にケジメをつける意味も
込めて、あえて式に呼んだ。
裏では「あんな変態女と?」「家政婦以下の奴隷にし続けるのか?」とか、披
露宴で彼女の実家の規模を知って「逆玉の金目当てか?」などと言われている
のは知っている。
だが僕はそんな気は一切ないので全く気にしない。
お義父さんの会社は彼女の弟が継ぐし僕は婿養子でもない。
確かに披露宴や新居は双方の親の意向もあり援助はあったが、その他の事や今
の家計は僕と彼女の貯金からや僕の仕事の収入のみだし仕事も変わらない。
ウチの車は彼女が乗っていた可愛い軽自動車1台のままだ。
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