第三章:新しい家
引っ越しの日の夜、家の中にはまだ段ボールの匂いが残っていた。
新しい壁紙、新しい家具、新しい空気。
だが、美香の胸の奥には、どこか懐かしい緊張が漂っていた。
夕食を終え、食器を洗い終えたあと、美香は静かに寝室へ向かった。
息子・大樹は自室にこもり、泰三はリビングで新聞をめくっていた。
誰にも気づかれないように、彼女はそっとクローゼットを開けた。
そこには、結婚祝いに泰三が贈ってくれた白いレースのネグリジェが
吊るされていた。柔らかな布地に指を滑らせると、心臓が少しだけ
早く打った。
「こんな服、もう着ることはないと思ってたのに…」
鏡の前でネグリジェを身にまとい、髪をほどく。肩にかかる髪が、
レースの縁に触れてくすぐったい。
胸元は大きく開き、肌が透ける。ブラジャーはつけなかった。
下着も、白く小さなTバックを選んだ。
鏡に映る自分を見つめながら、美香はそっと息を吐いた。
乳首を触るとすでに固くなっていた。
「私、まだ女でいていいのかな…」
その問いに答えるように、泰三の声が遠くから聞こえた。
「美香、そろそろ寝ようか」
彼の声に導かれるように、美香は寝室の扉へと歩き出す。
廊下を歩く足音が、静かな夜に響く。
扉の前で一度立ち止まり、胸元をそっと押さえた。
その仕草には、期待と不安が入り混じっていた。
扉を開けると、泰三がベッドの上でブリーフづ型で待っていた。
彼の目が、美香の姿を見て驚きに染まる。
「美香…綺麗だよ。まるで夢みたいだ」
「うれしいわ。これから毎日、あなたと…」
二人の唇が重なり、静かな夜が熱を帯びていく。
大樹は、廊下の影からその姿を見ていた。
母が、まるで別人のように見えた。
「ママが…あんな姿で…」
悔しさと戸惑いが、彼の胸を締めつけた。
寝室の扉の向こうで、母と泰三の声が交わる。
「あうん、あうん、泰三さん」
「美香、美香」
「「あっ、あっ、あっ・・・もっと、もっと・・」
その声は、彼の知らない母のものだった。
つづく
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