「怜子さん、誓いのお言葉とっても素敵でした。聞かせていただいて本当にありがとうございました」
お食事までの残りの時間、私達はお庭を散策しました。
主人同士は二人で楽し気に話しながら歩き、自然と私と綾香さんも女性同士お話ができました。
「いいえ本当に恥ずかしいです。あんな性のことをお二人に聞いていただくなんて。ただ、そんな恥ずかしさに堪えて主人に誓いたかったんです。なんだか利用してしまったみたいでごめんなさい」
「こんなこと申し上げると失礼かもしれませんが、お気持ちすごくよく分かったんです。私も、、、Mなんです」
「え、、綾香さんも」
「はい、亡くなった主人に躾けられました。主人は病気で亡くなったのですが、もう死期が近いと覚ったときに今の主人に私を譲渡したんです」
「譲渡・・・?」とても驚きました。
控えめでお綺麗な綾香さんが物のように、父から息子に譲渡されただなんて。
「そうなんです。私、譲渡されたんです」
そう話す綾香さんはとても落ち着いて不幸な感じはなく、ウェディングドレスの似合う幸せな花嫁そのものでした。
「前の主人も今の主人も私の性をとても分かって愛してくれて、愛ってこれほど大切なんだって教えてくれました。女性にとって、特にMの女性にとっては、愛する人に愛されることほど幸せで大切なことはないって知りました」
「そうですね、本当にそうですね。愛のために羞恥や痛みや苦しみを与えられる幸せを私達は教えられたんですね」
綾香さんと私はどちらからともなく、そっと手をつないで歩きました。
お食事会のあるレストランに向かう途中で、あの美しい少女とお父様のカップルに会いました。
現実離れした美しさと言っても大袈裟でない、清らかで幸福に満ちた美少女のウェディングドレス姿。
「こんにちは、おめでとうございます」と少女が微笑みながら祝福してくれました。
「こんにちは、ありがとうございます。そして、おめでとうございます。とっても綺麗で見とれてしまっていたんですよ」と私達も少女に祝福の言葉をかけました。
「ありがとうございます。同じ日に同じ教会でお式をあげられて嬉しいです。私は水野沙紀で、こちらは夫の隆之です」
少女が自分達の名前を名乗ったので私達もそれぞれ自己紹介をしてレストランに入りました。
披露宴会場とは違いますが、テーブルのお花が華やかでお庭のよく見えるウェディングらしい個室の席でした。
主人同士も綾香さんの譲渡の話はしたらしく、みんながずっと前から家族同士のお付き合いをしているような打ち溶けた雰囲気が生まれていました。
「沙紀ちゃん、幸せそうでしたね。なんだかあの子がこれからも幸せでありますようにって祈りたくなる」と涼次さんが沙紀さんの話を持ち出しました。
「そうだね。僕たち以上にこれから長い人生だからね」
「沙紀さん、ほんとにお父様を愛してらっしゃる感じでしたね」綾香さんもしみじみとおっしゃいます。
綾香さんご夫婦は、私達の家から電車を一回乗り換えて一時間くらいのところにお住まいだそうです。
これからもお互いに仲良くお付き合いしようということになりました。
同世代の同じ境遇の方達がいるのはとても安心感があります。
それに私よりもずっと本格的なお責めを経験なさっていそうな綾香さんには、いろいろと教えていただきたいですし。
お食事の時間が楽しく過ぎ、私達は衣装室に行ってドレスを脱ぎました。
沙紀さんもここでドレスを脱いで、お父様との初夜を過ごすお部屋に行くんだなと、そんなことを思いました。
※元投稿はこちら >>