衣装室の一番奥のフィッティングのカーテンが開きました。
そこにいた全員が一瞬固まりました。
あの中学生とも小学生とも見える少女がウェディングドレスを纏ってそこに立っていたのです。
息を呑む美しさという言葉が大袈裟でなく浮かびました。
細くどこか哀しげにも見える面立ちが、純白のドレスに映えて現実感のない美しさです。
「パパ、どう?」少女に問いかけられて父親らしい男性が我に返ったように答えます。
「うん、うん、すごくすごくきれいだよ。こんなにきれいな花嫁、初めて見た」
「ほんと?良かった」屈託なく微笑む少女はいつまででも見ていたくなるほどきれいでした。
ホテルのレストランで坂井君母子というか夫婦とお夕食をご一緒しました。
「あの女の子ほんとにきれいだったね」涼次が感心したように言います。
「うん、パパって言ってたからやはり親子なんだね」と坂井君。
私が「中学生かしら、小学生と言われてもそうかなと思う感じだったけれど」と言うと綾香さんが
「小学6年生みたいですよ。打ち合わせの時に先月12歳になりましたって言ってらしたのが聞こえたんです」
「ええ、小学生かあ」坂井君が驚いた声を出します。
「愛し合うってそういうことなのかなって、私とてもあのお嬢さんの気持ちに感動しました」綾香さんがしみじみとおっしゃいます。
「あの歳でお父さんと、、」涼次が独り言のように言います。
「ええ、年若いお嬢様達はこちらのお式の夜に喪う方も多いと聞きました。とても素敵ですよね」綾香さんの言葉に全員が納得したように頷きました。
まだ小学6年生のあの美しい少女も、明日の夜初めての愛を受けるのかしらと思うと、どうか素敵な夜になりますようにと祈ってしまいます。
まだ幼い身体が愛のために開かれて破瓜を受けるのです。
きっとあの少女はその痛みに堪える覚悟をしっかりと持ってここに来たのでしょう。
私も明日、お式の後で涼次に二人だけの誓いの言葉を捧げるつもりです。
坂井君夫妻に誓いの証人になっていただいて。
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