自分の気持ちを見直すからと言ったものの、涼次はやはり私の子供であって恋人ではありません。
でも息子とはいえ男性に正面から好きだと告白されて、胸の中が暖かくキュンとしたんです。
涼次を傷つけずに、そして二人だけの家族の関係を悪くしないで、どうにか涼次の気持ちが醒めるのを待ちたいという思いもありました。
その一方で、私の中にも涼次の気持ちを女として受け容れたいという感情が少しずつ芽生えていました。
良い考えが浮かばないまま涼次は3年生となり、一ヶ月が過ぎてゴールデンウィークになっていました。
涼次は、私が時間を欲しいと言ったことでじっと待ってくれています。
でもそろそろ何か言わないとと私も少し追い詰められた感じになっていたのです。
ゴールデンウイークは特に予定もなく二人ともリビングで意味もなくテレビを見たりしていました。
「涼ちゃん、ちょっとお話いい?」思い切って切り出しました。
涼次はテレビを消して私の方を見ました。
「うん」
「ママね、あれからいっぱい考えたの。涼ちゃんの気持ちはとっても嬉しいって思ってる。でも、涼ちゃんのことを男性として考えたことなかったし、ママすごくとまどっているの」
「うん、それはそうだと思う」
「涼ちゃん今年は受験でしょ、それに差し支えても困るし、どうしよって。それにママが涼ちゃんのことを仮にそういう風に好きになっても、涼ちゃんは醒めちゃうかもしれないでしょ」
「そんなことない。僕は真剣に考え抜いて、それでもママを本気で好きで、どうしようもなくて告白したんだから」
「うん、ありがと。それでね、涼ちゃん、涼ちゃんはちゃんと勉強してきちんと受験して、志望校に受かって欲しいの。それまでママのことは待って。ママも涼ちゃんが好きよ。まだ気持ちの整理はついていないけれど、胸がときめいたの、涼ちゃんに告白されて。だから来年の今日まで一年待って、それでも涼ちゃんのママに対する気持ちに変わりがなかったら、そしたらママ、涼ちゃんの気持ちを受け容れる」
「え?ほんとに?ほんとに1年間僕の気持ちが変わらなかったら、ほんとに僕の恋人になってくれるの?」
「恋人」という言葉を聞いて胸がズキュンと鳴りました。
恋、ずっと忘れていたことかもしれません。
涼次に告白されてからずっと胸にもやもやとかかっていた甘い疼きは恋の始まりのあの感覚だったって、そのときわかったんです。
そして私もその瞬間から涼次を恋する人として感じるようになったんです。
「気持ちが変わらないことと、ちゃんと勉強して高校に受かることよ」
「うん、約束だからね」
来年のゴールデンウィーク、私達はどうなっているんだろう、そんな想像が私の中で膨らんでいきました。
そして一ヶ月たつと「ママ、僕あれからママのこともっと好きになってる、ママのこと思うだけで胸がキュッてなる」そんなこと言うんです。
私もそんな風に言われると胸がキュッとなっちゃうのに。
夏休みに涼次とショッピングモールに行ったときのこと「ママ、手つないでもいい?」って言われました。
この年頃の男の子は親と一緒に歩くのさえ恥ずかしがるのに。
「涼ちゃん恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいわけないでしょ、好きな人と一緒に手をつないで歩くんだから」
私達手をつないで歩きました。
とっても幸せな気持ちでいっぱいになりました。
そして涼次のことを「好き」っていう気持ちで胸がいっぱいになったんです。
ずっと手をつないで歩いていたいって思いました。
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