足元におしっこの雫を滴ながら、私は「行きます」と答えるしかありませんでした。
「時間は15分だよ。
それを過ぎたら、お母さんを置いて帰っちゃうからね。」
そう言った息子は、自分は車の運転席に乗り込みます。
もう時間は計られ始めたみたいです。
私は立ち上がって、カーブの先にある家の方に歩き始めました。
カーブを過ぎると、目的の家の薄暗いもん門灯が微かに見えてきました。
それ以外は真っ暗です。
足元を見ると、私自身の足がわずかに白く見えるくらい。
歩いてる先に障害物とかあっても、全く分かりません。
だから自然に両手を前に出して、手探りのような感じで歩いていきました。
だから自然歩くのも遅くなるのですが、何よりあの目的の家に近づくのが恐くもありました。
もしかしたら、まだ起きてる人がいるんじゃないかしら..。
私が近づいたのを察知して、いきなり家中の明かりを点けて、家から逞しい男の人が何人も飛び出して来て、裸の私に明るいライトを浴びせかけ、私の髪の毛や手首を掴み、
「なんだ、こいつは?」
「裸の女だ。変態なのか?」
「捕まえて警察に突き出せ!」
とか言うのでは..。
そんな妄想をしながらですから、自然その家に向かう足取りも重くなります。
やっと家の敷地から数メートルのところまで来ました。
出来るだけ目立たたないようにと、暗闇の中でしゃがみこみ、家の様子を伺いました。
物音は全くしません。
幸い犬とかも飼ってないようです。
道と家の敷地は、私の腰くらいの高さのフェンスで遮られていて、その内側は花壇と言うか植え込みと言うか、植物が植えているようでした。
目を凝らすと、薄暗い門灯の光で、軒先に蛸足のハンガーがぶら下がって、そこに白っぽい洗濯物が何枚か掛かっているのが分かりました。
どれが女物の下着なのか、ここからでは分かりません。
いまなら、まだ敷地の中に入ってないから、引き返せます。
私の良心は、引き返しなさいと囁くのですが、すでに人間の良心を越えたいけない行いをしてしまって、息子に良心を奪われてしまった私は、息子の命令に従う方を選択していましました。
フェンスの中に入れないだろうか..。
そっと立ち上がって、フェンスを手で触りながら伝い歩きすると、一ヵ所フェンスに切れ目がありました。
そこを手探りすると、どうやら狭い片開きの戸のようです。
フェンスの下を探ったら、開閉するノブがありました。
そっと握って回してみると、鍵など掛かってなくて、ノブは回りました。
それどころか、回したノブを引っ張ったら、開き戸が開いたんです。
そこからの私は、自分の見たり触ったり動いたりするだけでなく、頭の中で考えたり判断したりしたことすら、全てが夢の中でのような、頼りないぼんやりした感じになっていました。
開き戸を開けて、足を一歩庭の中に踏み込みます。
足の下は、レンガかタイルを敷き詰めたような感じでした。
まだ家の中は暗いままです。
何かが動いてるような物音や気配もありません。
私は軒先の洗濯物に近づきました。
庭からでも、手を伸ばしたら軒先の洗濯物に届きそうです。
そっと手を伸ばしました。
指先に布に触れた感触があった瞬間、私の股間からも、熱い汁がたらーっと内腿を流れ落ちる感触がありました。
こんな犯罪を犯そうとしてるのに、私ったら..。
なんて困った変態なの!
全裸で他人様から許されないことをしている現実の私を、まるで第三者の様に見つめる別の私が冷静にそう感じました。
現実の私は、ぶら下がった洗濯物の中から、女物の下着を探さなくてはいけません。
男物の下着やハンカチ、靴下とは布地の肌触りが違う筈..。
そう思って探っていると、柔らかな肌触りの小さめの洗濯物を探り当てました。
明らかにゴムが入っています。
きっと女性用のパンツ、ショーツかパンティーに違いない!
そう思ったら、私は直ぐにその洗濯物を蛸足ハンガーから外そうとしました。
ところか、どこかで洗濯ハサミのようなもので押さえられてるらしく、引っ張っただけではハンガーから外れないんです。
仕方なく、右手で洗濯物を握ったまま、反対の手を伸ばして、蛸足ハンガーの奥の方を探ってみたら、洗濯ハサミのような物に手が触れました。
それを外そうとするんですが、暗い上に重なった洗濯物に遮られて見えず、外せないんです。
もたもたしてたら、息子の言った約束の時間が過ぎてしまいます。
焦った私は、右手で握った洗濯物を、強く引っ張りました。
パチンっと言う音がして、その洗濯物は蛸足ハンガーから外れてくれました。
しかし同時に、蛸足ハンガーが大きく揺れて、ガシャン!と大きな音を立てて、下に落ちてしまったんです!
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