ヒロトは私のセックスレポートを入院してからも毎日読み返していたらしい。
ヒロトに直接会えていなかったから兄に頼んで渡してもらっていた。
はじめはノートに書いていたけれど、ヒロトがルーズリーフでくれと言ったので途中から変えたそれは、何かの資料みたいに厚いファイルになっていた。
『ゴメンって言ってたよ』
ヒロトは私をこんな状況にしてしまった事を謝っていたらしい。
将来、責任取るつもりで自分の趣向に引きずり込んだのに、自分がこんな状況になってしまって申し訳ないと…兄にも謝ったらしい。
きっかけはそうだったけれど、私が自分で決めた事。そう伝えたかったけれど…ヒロトは二度と目を覚まさなかった。
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ヒロトの葬儀が終わって…
私は喪に服した。
日常生活で特に変えた事はないけれど、セックスを一切しなかった。セックスどころかオナニーさえも我慢した。
両親、友達、加藤達にはその事を宣言して、普通の中学生として生活した。
事情を知らない先輩やクラスメイトからたまに誘われたりもしたけれど、ミキが壁になって全部引き受けてくれた。
マイ達も私に話が行かないようにと気にかけてくれた。
両親は相変わらず仲はいいけど、私の前でセックスする事はなかった。
不思議な事に性欲に関する事を一切断ったら、すぐに生理が来た。胸も一気に膨らんで、ミキと変わらないくらいに…。
唯一、下の毛だけは全く生えず、調べてみたら私は無毛症だって事がわかった。
ヒロトに触って欲しかったな…
そう思いながら1年…ヒロトの命日の前日。夢を見た。
私がヒロトと初めてした頃の、元気な時のヒロトが夢に出てきた。
また…見せて欲しい。
シホちゃんの可愛い姿を。
俺の望みはわかってるはずだよね?
自分の心の奥にしまい込んだ願望が見せた夢なんだと思う。だけど、ヒロトの顔で、声でそんなのを言われたら…
ヒロトの命日の朝早く、私はヒロトの眠るお墓に行った。そこで手をあわせながら、いつも…いつでも…誰としてても、貴方に見られているのを意識しながらするから…私のセックスを見て!感想は夢で教えて!貴方の好きなヤリマンに戻るね!もう、我慢しない!
お墓の前でヒロトに宣言してから急いで家に帰る。
1年ぶりのセックス…
まだ寝ていた兄を無理矢理起こして手を引いて部屋へ。
「お兄ちゃん、セックスして!」
『ん……は?』
「今日から、またするの。ヒロトのお願い…夢で聞いてさっきお墓に行ってお話ししてきた!」
『……そっか。……わかった』
兄は1年ぶりにする私を…私の身体を優しくほぐすように撫で回し、優しく抱いてくれた。
1年しないと穴も縮まるのか、入れる時少し痛みがあった。兄は私の様子を見ながらゆっくりと進めてくれて、久しぶりのセックスで私の身体を解放してくれた。
『泣いてるのか?』
自分じゃわからなかったけど、涙が出ていた。
ヒロトへの想いなのか、ただセックスできる事の喜びなのか。
「あ…お兄ちゃんゴムして…」
『あ、そうか。もう出しちゃまずいんだったな』
一度抜いてゴムをしてからもう一度挿入…。ミチミチっとゴムが襞で弾かれる音が聞こえ、ゆっくりと奥まで侵入した。
私は目を閉じて、兄には悪いけどヒロトを想像して抱かれた。
なんてことない普通の、ホントに普通のセックスだけど、性器同士で繋がりながら肌を合わせられる行為をこの時初めて心地よく感じた。
身体は激しく反応するけれど反対に心は穏やかで、全身から頭に送られてくる「気持ちいい」という情報の波で最高に気持ちが昂った。
朝7時から今までで1番幸せな気分になれるセックスができた。
たっぷり出された精液入りのゴムを持ってリビングへ。
父と母にそれを見せながら、喪明けを宣言。
母はいつの間にか買っていた大量の、ダンボール箱に入ったコンドームをテーブルに出してきた。
「こ…れ……」
『使うでしょ?たっくさん買っておいたから!』
「…ふふっ!娘にプレゼントするもんじゃないじゃん!」
『娘の身体を想う母親の気持ちだよ!』
「そっか…ありがとママ」
何か言いたげだった父には、今日帰ってきたらいっぱい抱いてと言っておいた。
目を大きくあけて、大きく頷くだけの父。たぶん早退してくるな…と直感で感じた。
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