「物証はもう一つありました。続けてよろしいですか?」
「少し休憩にしましょう」中山婦警がお茶を出してくれた。裕介は妻を貴教のもとに送った自分を悔いていた
「召し上がってください、これ以上は聞かれないほうがよろしいかと思いますが」裕介はお茶を一口飲んだ
「聞かせてください」
「それでは、美佐子が自宅からノートPCを莉穂のマンションに持ち込んだ理由はSDカードを見るためでした。盗聴記録にSDカードの存在が語られていて、その中に莉穂が貴教に言っていたのが、あなたのママでも絶対にできないこと、と言っていたことが映像に記録されていると言っています」
「それは何ですか」
「それは、非常にもうし上げにくいのですが…」女刑事は言いあぐんでいた
「代わるか友田」結城刑事が声をかけた
「いいえ、大丈夫です。その行為は、貴教の排便を莉穂が食しているものでした」
「は、はいべんですか?」
「ええ、精液、排尿、排便と莉穂の行為はエスカレートしていきました。それは自分が誰よりも貴教を愛しているということを証明するためだったようです。まだ12歳だった少年の排便を食することで女教師は少年の永遠を愛を勝ち取ったようです」
「そんな、12歳の少年になんてことを…」
「そのようなSDカードが30枚ほど存在していました。美佐子はそれをすべて見たかはわかりませんが、それらを見ながら、息子はすでに自分のものではないとさとったのかもしれません。そして犯行に及んだ。家に戻った美佐子は息子と最後の情事を行ったあと、眠っている息子の心臓にナイフを突き立てます。そして自らリストを切り、意識のあるうちに息子顔についている血液を舐め取ります。この時美佐子は莉穂に勝ったと思ったのでしょう、息子の血液を飲み込み、身体を重ね、穏やかな表情で口唇を重ね、絶命しています」言い終わると女刑事は目を閉じ、口唇を噛み締めた
凄惨な事件の顛末を裕介は誰にも語らなかった。
高田美智子は事件の直後、早産で女の子を出産した。母子とも元気に過ごしている。
半年後、内藤久美子は元気な男の子を出産した。夫とは離婚せずに、ある条件を突き付けられた。12歳の美波のお腹の中にいる自分との子供を出産させること、それが条件だった。真っ先に賛成したのは美咲だった。妹と父親より、ノンと母との子供を第一に考えてほしいと美咲は久美子を説得したのだ。
叔母を妊娠させたら…、凄惨な事件のあとに、それぞれにささやかな平穏が訪れた。
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